「太陽を食べるもの」『黒潮に生きるもの』(鈴木克美)
造礁サンゴに棲む共生藻は、ズーサンテラと呼ばれる。サンゴの個虫は海中のプランクトンを食べる。しかし、それだけで巨大な造礁サンゴをつくるのは難しい。しかもサンゴは、植物プランクとの豊かな濁った海にからきし弱い。造礁サンゴの発育には、餌の多い濁った海よりも、清澄な海水と強烈な太陽光を要する、
造礁サンゴが旺盛に生活し、サンゴ礁の発達した海では、サンゴ自体がえさをとらえるための条件よりも、ズーサンテラが太陽の光を食べるための条件の方が優先されていることは確かである。(鈴木克美『黒潮に生きるもの』)
サンゴ礁の動物で、ズーサンテラを体内に棲まわせているのはサンゴだけではない。たとえば、世界最大の二枚貝、オオジャゴ(ガイ)もそうだ。
オオジャコの両の貝殻のあいだから覗いて見える、毒々しいまでに派手な色の外套膜のなかにも、無数のズーサンテラがしっかり棲み込んでいるのである。オオジャコだけではない。シャゴウ、シラナミ、ヒレジャコ、ヒメジャコ。シャコガイの仲間は、みんな体内にズーサンテラを共生させている。
まだ、ある。ふつう二枚貝は、水管を水中に突き出しているが、シャコ貝の水管は発達せず、丸い穴が開いているだけ。そのかわり、美しい色彩の外套膜を外に張り広げてズーサンテラに太陽の光を食べさせているのだろう。
鈴木の議論で面白いのは、ズーサンテラの光合成を「太陽の光を食べている」と表現していることだ。その意味では、ズーサンテラこそは、サンゴやシャコ貝の親だと言ってもいい。サンゴやシャコ貝こそが太陽を食べているとみなせば、本当はサンゴやシャコ貝が太陽の祖先になると言い換えてもいい。ともあれ、シャコ貝はその生き方において、もうひとつのサンゴなのだ。
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