洞窟と浜辺から持ち帰るサンゴ石
「あの世」の境界から石を拾ってくる行事(『沖縄・奄美の祝事』(崎原恒新、恵原義盛))。
今帰仁村今泊、クバの御嶽の西側中腹にあるフトウキヌイツピャー(洞窟)に旧五月二十九日、九月二十九日(かつては九月九日であったという)に祈願、小石を懐中にして帰ると子を授かるといい、湧川ではワルミヌテラ(洞窟・ビジュル信仰)では今泊の浜からウル(サンゴ石)を拾ってきて祈願し、帰りには以前に拝んだ人のウルを持ち帰ると子が授かるといわれている。
どちらも「あの世」との境界域から持って帰ることが言われている。これはつまり、他界が遠隔化される以前から、浜辺はいわば境界域であったことを示している。
そうだとすると、今泊の先の「あの世」はどこだったろう。地勢からすれば、伊是名島がふさわしい。
谷川健一は書いている。
むかし、名護の祝女と伊平屋島の王とは兄妹関係にあった。そこで名護では、旧七月の海神祭りのときにネズミをイノシシに見立てて、小さな舟にのせ海の彼方の伊平屋島にむけて流す。するとそのお返しとして伊平屋島のほうからは、旧の三月ころにヒートを送ってよこすというのである。
これは王と祝女の関係に変形される前は、名護の「あの世」が伊平屋島であったことを示していると思える。
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