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2016/07/05

シャコ貝・サンゴ礁・シュク

 「猿楽伝承に言う、不思議な子供を詰めたまま水中を流れてきた「壺」」。ミジャグチの伝承においても、「卵のような形をした、なにかの容器状のものに包まれて出現する童子のイメージが広くゆきわたっている」。容器はしばしば「新生児を包む胞衣として描かれる」ことが多い。

 蚕は、

ミシャグチのように、殻につつまれて守られている間に、見えない殻の内部で劇的なメタモルフォーシスをおこなって、現実の「見える」世界の中に出現、「みあれ」するのだ。これが諏訪信仰圏で、ミシャグチが胞衣の中で成長して、童子として出現すると考えられているのと、よく似た考え方である。

 琉球弧では、壺や卵や容器はシャコ貝であり、胞衣はサンゴ礁であり、そのなかで育つのはシュクとして表現されている。驚くことに、あるいは不思議なことに、ミシャグチとシュクとは語音の共鳴さえ起こしている。

 シャグジ=宿神を、このように環太平洋的な広がりをもった思考としてとらえ直してみると、私たちの前に思いもかけなかった可能性が開かれてくる。宿神的思考の記憶は、南北アメリカ大陸から東北アジアをへて中国少数民族の世界へ、かつてのスンダランドに属する島々やポリネシアへと広がっていく、広大な環太平洋圏を舞台にしておこなわれる未来の神話学のなかに、正確に位置づけることさえ可能である、と私は思うのだ。

 そのひとつの琉球弧は、シャコ貝、サンゴ礁、シュクという動物や自然たちによって描かれることになるだろう。


中沢新一 『精霊の王』

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