『先祖と日本人』(畑中章宏)
畑中章宏の『先祖と日本人』を印象深く読んだ。柳田國男、橋川文三、伊藤静雄、白井晟一、福永武彦、坪井洋文、どの人の作品に触れるにしても、律儀に出身地、家族構成、生い立ちを丹念に記しているのが、この本のモチーフから来ているように感じられた。
それぞれのテーマは、もう少し掘り下げてほしいと思うところで話題が変わるので、まるで柳田國男の文章みたいだと思いながら、でも、広げるべき視野の行く先はいくつも示唆をもたらしてくれた。
戦後も災後も、「記憶の伝承」ということはよくいわれた。しかし、理性ではわりきれない、魂の次元を揺さぶられる事態が、大きな戦争や、巨大な自然災害なのではないか。柳田は『先祖の話』で、「生死観を振作せしめる」という言葉を使った。私たちは、「反省の学」を模索するとともに、新しい泣きかたを見つけ出さなければいけないと思うのである。
そうなんだろうと思う。「振作」は「しんさく」と読むと辞書にある。
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