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2016/06/17

黒島の針突き由来譚(『南嶋入墨考』)

 黒島での針突き由来譚(『南嶋入墨考』)。

 昔、ある人が八重山から沖縄に旅する途中、難船し、流されて天の根まで行ってしまった。(天の根というのはどこかと聞くと、ずーうっと南の方の島だという)そこはヤラドル(濁海)で、船が沈みかかった。そのとき、船に女の兄弟の魂の手が現われて、沈もうとする船を持ちあげて呉れ、船底の釘を抜く虫がいて、釘を抜くと、すぐその抜けた穴に高瀬貝がはいって、その代りをつとめ、船も人も無事帰ることができた。そこで、船人たちは故郷に帰ってから、その魂の手に現われていた入墨と同じ模様を姉妹の現実の手に入墨し、兄弟たちは高瀬貝の形をした笠を「クバ」の葉で作らせて冠らせることにした。

 この伝承をみると、船が流された先は、要するに「あの世」へ行ったことを意味している。これが暗示しているのは、針突きは「あの世」からもたらされたということだ。これは入墨は「あの世」で教わるというマオリの神話を思い出させる。

 ただし、「高瀬貝」が人間を助けるという人間との関係の位相や八重山から沖縄への船旅という想定は、新しさを感じさせる。

 この箇所は後代の変形と見なしてみる。すると、生と死が区別される前に霊魂は発生しているように見える。蝶形骨器と崖葬墓の出現はどちらも貝塚前4期からとされていて厳密に前後を確定するのは難しい。強いていえば、古我地原遺跡の蝶形骨器の祖形が前3期とされているから、霊魂の方が先と言いうる可能性はある。

 これを前提にすると、ことの推移はこうなる。

・生者と死者の共存

 ・蝶は死者の化身
 ・霊魂の成立
 ・蝶は霊魂の化身
 ・針突きの発生

・生者と死者の区別

 ・崖葬墓の発生
 ・空間としての「あの世」の発生
 ・ヤドカりがトーテム

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