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2016/05/28

『奄美与路島の「住まい」と「空間」』(石原清光)2

 重要なことが書かれている気がするので、再度、『奄美与路島の「住まい」と「空間」』に当たってみる。

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 「トビャラ」が葬地にして入口だというのは、飛ぶ術を持った老人が、ここからハミャ島や請島まで飛んでいったという伝説を元にしている。また、その墓もある、と。「トビャラ」という岩礁から、ハミャ島や請島を「あの世」に行ったと見なす。

 「カミドゥリ」という岩礁が葬地だというのは、人骨がよく出たという言われから。また、記述はないが、この場合の「あの世」は「ハミャトゥ」かもしれない。

 「クモデ」は、神の迎えと送りで、来訪神の舟をつなぐ場所とされるので、これもかつての「あの世」と見なした。しかし、位置関係からいえば、「トビャラ」の近くなので、かつての「あの世」としてのハミャ島や請島の転移かもしれない。

 与路の場合、むしろ陸の他界の方が見やすいように見える。

 「アブリャ」は、神人やユタの儀礼に使われ、「テリャ」は神社として一般の人の信仰を集める。「アブリャ」の頂上付近は、「西のミャー」、「テリャ」の頂上付近は、「東のミャー」。東のミャーは特にミャートンチと呼ばれる。

 神道は、ウブツやアブリャなどのヤマと前浜を結ぶ垂直の道が基本。アブリャは、ヤマ全体が風葬にかかわるという捉え方はない。

 ウブツの神は、テリャの神とオナリとイェリの関係にあり、三月三日にオナリであるウブツの神がテリャの神の所へ行く。

 島の世界観の構造が見えにくいのは、他界が遠隔化されたからだが、その他にも、遠隔化された他界から霊力が転移され、聖地が発生したことにも依る。

 与路島のケースから分かるのは、精霊の住む場所を除くと、

 1.葬地
 2.かつての「あの世」への入口
 3.かつての「あの世」
 4.遠隔化された「あの世」
 5.(遠隔化された)「あの世」が転移された場所

 という五つの系列を見定めることがポイントになると考えられる。

 請島はともかく、アブリャ、テリャ、ハミャ島で、かつての「あの世」を再現してみれば、実にじつに小さなコスモスが浮かび上がってくる。 


『奄美与路島の「住まい」と「空間」』

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