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2016/04/17

アイヌのアイアイ

 アイヌでは、出産のとき、火の神に取り上げてもらうために、炉辺に産褥をととのえることがある。子供が生まれると、父は。男の子なら「わが家の幣をつぐもの」、女の子なら「わが家の火の神の血を引くもの、火の女神の魂のかたわれ」と唱える。

ちなみに赤ん坊は泣声を模してアイアイとよばれるが、またテーネプ・テンネプ(汚物まみれ)ともいう。二~三歳になるとポンション(小さなうんこ)、四~五歳のときにはションタク(うんこのかたまり)とよぶ。(『風土記日本. 第6巻 (北海道篇).』1958)

 書き手はこれに続けて、「つまりよい名前をもつと悪霊のとりこになるから、名前まけしないようにわざときたない呼び方をするのである」と解している。

 これは、糞便に「穢れ」の観念を持ってからの理解で、もともとはこの呼称も「よい名前」なのだ。糞と子供の同一視の思考は相当に古いのだと思える。

 また、テーネプ・テンネプ(汚物まみれ)、ポンション(小さなうんこ)、ションタク(うんこのかたまり)という名づけは、金久正が挙げた、クソガネ(糞兼)、アハマリ(赤まり)、マリッグヮ(まりっ子)と同じ意味だ(「イャンハツとツモリ」『奄美に生きる日本の古代文化』)。

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コメント

先日、金久正の『奄美に生きる日本の古代文化』を購入しました。
これは面白いですよ。沖縄諸島の民俗とも共通する部分満載ですね。

それにしても、アイヌ圏でも女の子が火の神と関わるのは沖縄島中南部の「火の神」信仰を思わせます。
我が家の火の神も台所に鎮座して家族の安全と繁栄は見守っています。

投稿: 琉球松 | 2016/04/17 08:58

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