産育と便所
琉球弧の網羅性は低いが、『日本産育習俗資料集成』(2008年)から、産育と便所のつながりを概観してみる。
胞衣を「便所」近くに埋める地域のある県。
北海道、青森、岩手、秋田、群馬、富山、長野、愛知、兵庫、奈良、福岡、沖縄
北岩手では、胞衣は木灰のあるところには埋めない。灰気が通うと、胞衣が生き返る。産婦のすそから元の所へ入って行き、産婦の生命を奪う。また、盛岡では胞衣を酒で洗うと、誰の生まれ変わりか分かる。
群馬の吾妻郡では、後産のおりない時には、便所に下駄と草履を片方ずる履いていく。静岡の周智では、後産が降りないときは便所の踏み板を裏返しにする。
三重県鈴鹿郡では、胞衣は「ヨナ」。山口県の熊毛郡も。「イヤ」が現われるのは、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島。沖縄で胞衣埋めが便所となっているのは宮古郡とある。大島南部では「ヤ」。語頭の母音が脱落。
メモ。胞衣は、北上するにつれ、エナ音に転化したように見える。
宮参りが便所になる地域のある県。
岩手。
琉球弧では「浜下り」。鹿児島の吉利村も浜に行く、とある。
もちろん、他に見ていない地域がたくさんあるのだろうが、産育と便所のつながりは北方で強く現われている。
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