山の他界の遠隔化と聖域の発生
これまで海の彼方の他界を軸に、他界の遠隔化を考えてきたが、山の他界の方が、「御嶽」の発生は捉えやすいのかもしれない。
まず、地先の山が「あの世」に選ばれる。他界が遠隔化されるということは、地先の山の、その向こうに見える山頂付近に「あの世」は遠隔化される。
次の段階では、その山頂付近が聖域化され、高神が出現することになる。海上他界と異なり、ここでは、遠隔化された他界と聖域は地続きで表現することができる。
ただし、山の他界の場合でも、それで済むとは限らないのは、実際に神人がそこに行けるとは限らないことや、島人とともだった儀礼が行なわれにくいことだ。そこで、山頂の聖域の霊力を転移させ、集落に接する場所に、第二の聖域を設けることになる。そしてここに高神が居場所を定める。
山の他界の場合、かつての他界が海上へと遠隔化されることもありうる。国頭のシニグ祭では、男子結社員たちが、来訪神として山から出現するのは、地先の山の他界が、海上へと遠隔化したことを示すのではないだろうか。
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