「奄美諸島の神山」(小野重朗) 2
小野重朗の『南島の祭り』(1994)に挙げられている例について、認識が誤っていたので、再考する。
山の他界の場合、ぼくは、
(遠隔化された他界)→(かつての他界)→(集落)
という行路を想定したが、ここに(神の降臨地)を加えなければならない。
(a山頂:神の降臨地)→(b山:遠隔化された他界)→(c山:かつての他界)→(イビ)
請島池地(#1)。
ミヨチョン山→モリヤマ→(カミミチ)→ミヤ。
この場合は、ミヨチョン山((a or b),or(a and b))であり、モリヤマ(c)となる。
この解釈は、小野のいう「森山は聖地だからすぐれた人や祖先をそこに葬った例がある」という理解と合致する。
オガミヤマは、地形、地勢を表わすモリヤマとは異なり、明らかに信仰地名だ。「神人たちが拝む山、祈願をする山」だから、(a)に該当している。同様のことは、オボツヤマにも言える。
律儀に、a→b→cという行路が見られないのは、ここに同一化や不在の例があるからかもしれない。
1)同一化
・a山頂とb山は同じである場合。遠隔化された他界の山の山頂が降臨地になる。
2)不在
・他界が遠隔化されたのが、山ではなく、海上であった場合。この場合、存在するのは、c山だけになる。
あるいは、同一化の方が、基本的な図として自然かもしれない。
加計呂麻島瀬相(#10)では、モリヤマからもオボツヤマからも行路が存在する。これは、(かつての他界)→(集落)と(遠隔化された他界)→(集落)を示すものだ。ここのイガミが、モリヤマイガミ、オボツイガミ、テルコイガミとあるのは、
モリヤマイガミ かつての他界
オボツガミ、テルコイガミ 遠隔化された他界
に対応していると考えられる。
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