「沖の島」の系譜 注
「沖の島の系譜」について、子音の有無の観点から見てみる。
波照間島(パティルマ) ptrm
加計呂麻島(カキルマ) ptrm
鳩間島(パトゥマ) ptm
池間島(イキマ) ptm
来間島(クリマ) ptm,trm
多良間島(タラマ) trm
慶留間島(ギルマ) trm
古宇利島(フイ) p
ptrm 波照間、加計呂麻
ptm 鳩間、池間、来間
trm 多良間、慶留間、来間
p 古宇利
これを見ると、間違いなく「波照間」と同型と見なせるのは、「加計呂麻」のみ。 「鳩間」、「池間」、「来間」は、「波照間」からの変化を想定できるが、この三者間のみでは、同型にはならない。「多良間」、「慶留間」も同様に。「古宇利」に至っては、他の単語からでも導けるくらい任意性が高い。はだ、「フイ(越えた)」という意味の類縁は、魅力的なところがある。
同行内の母音の変化がなく、無理なく「波照間」からの変化を想定できるのは、「加計呂麻」と「慶留間」。これを同型と見なせば、
波照間、加計呂麻、慶留間、多良間、来間
となり、「来間」と「多良間」とその他という方言グループになる。
また、「鳩間」、「池間」、「来間」を「波照間」と同型と見なせば、「鳩間」、「池間」、「来間」、その他という方言グループになる。
どちらも通常言われる方言グループからは逸脱する。ただし、地名は古音を保存していると見なすことはできる。
全部を合わせると、
波照間、加計呂麻、慶留間
多良間
来間
鳩間
池間
これらが別々の方言グループだと想定することになる。
語源の同一性にこだわらなければ、「波照間」と同型と言えるのは、波照間、加計呂麻、慶留間。
そして、「古宇利」が、「越えた」という意味を持つように、多良間、来間、鳩間島、池間も、それに類する意味を持つと解することはできる。これらは言わば、オー系地名の持つ「地先」に対して、「先」の意味を持つ。
オー系の地名が奔放な遍在ぶりを示すのに対して、「先の島」系列に遍在ぶりがないのは不自然だとすれば、やはり「波照間」の同型と見なしたい誘惑は残る。
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コメント
地名の話題にはついつい反応してしまいます(笑)
加計呂麻なんですが。。。
『琉球属島之圖』で加計呂麻は「懸間」と表記されていますから「カケ(の)マ」なのでしょう。
この地図で興味深いのは、現在の渡嘉敷島が「蝼間(ケラマ)」となってる事で、慶良間諸島の主島が渡嘉敷島だった事がわかります。その後「ケラマ」は「慶留間」に "移動" されたかもしれません。
「カケ」と「ケラ」は一見繋がらないですが、「懸の間」の「カ」が「ハ」に転じ、その後消滅したとすれば「ケノマ」となるはずで、「蝼間(ケラマ)」の語源は加計呂麻ではないかと考えてみました。
投稿: 琉球松 | 2016/03/12 14:35
琉球松さん
反応、大歓迎です。^^
加計呂麻とケラマは同系の地名なのでしょうね。それにしても、渡嘉敷がケラマになっているって、そうなんですか。ぼくも調べてみます。
投稿: 喜山 | 2016/03/13 10:42
『琉球属島之圖』は画像の閲覧可能です。
『琉球属島之圖 完』http://www.okinawa.oiu.ac.jp/okinawa-cgi/tsuika/2.htm
投稿: 琉球松 | 2016/03/13 13:35
琉球松さん
サイト情報、ありがとうございます。しげしげと眺めています。漢字の当て方が興味深いです。
投稿: 喜山 | 2016/03/21 08:22