「国生み神話考」(松前健)
松前健は、「国生み神話考」のなかで、イザナギ、イザナミの国(島)生みを南太平洋の「原初の岩からの万物や人間の誕生」と結びつけて考えている。
岩からの神霊や人間の祖先の誕生というだけの観想なら、岩石を神霊の憑り来る座であると考えた原始信仰であって、世界には決して珍しくはないが、天地万物が誕生して来るとか、島々を生み出すとかいう話になると、やはり特殊な感じを免れない。この観想の起源は、一体何であろうか。一面に、やはり火山の爆発による海島湧出というような現象も考えられよう。
岩は豊かな霊力を内包し、溢れ出させる場だった。それが生と死が区別されるようになったときに、「あの世」との境界域となり、そこからトーテムや人間が出現するようになる。神が生み出されれば、そこに神は降りてくるだろう。この段階の思考を保存したものとして、南太平洋の原古の岩と「おのころ島」は同一のモチーフに属していると言える。
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