オー系地名としてのアラ
吉本隆明の「表音転移論」。
ア行音の濁音とラ行音の濁音は、じっさいに出あうことはなく、これを消去するような例をもたない。そうかといって同一性と等価性の行音をもたないわけではない。ア行音の濁音はワ行音の濁音は同一だし、ハ行音の濁音と等価だとみなされる。じっさいにいままでの範囲では、その具体的な例にであわないのだ。またラ行音の濁音は、ハ行音の濁音と同一と見なすことができ、ア行音の濁音と等価とみなすこともできるとおもえるが、いまのところそんな事例にであっていない。
新城島(アラスク)を、オー地名のひとつだと見なすと、
awa → aba → ara
これは、吉本のいう「ラ行音の濁音は、ハ行音の濁音と同一と見なすことができ」る例だとおもえる。
谷川健一は、加計呂麻島の島人がアロッチュと自称したkとについて、こう書いている。
さきに、カケロマ島の住人が自分たちのことをアロッチュと呼んでいたことを紹介したが、このことはアロウ島のもう一つの側面を伝えている。おそらく岩石の多い不毛な島である、という自卑の語感がそこにこめられている。アロウ島が荒びの島という場合に、死者の世界が荒涼とした不毛な風景として描かれていたことが推定される。(『南島文学発生論』)
これは、加計呂麻島と「あの世」に対して失礼と言うものだ。
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