竜巻としてのイノー(谷川健一)
谷川健一は、八重山で竜巻をイノーと呼ぶとして、こう書いている。
司馬江漢の「西遊日記」には長崎県の生月島について「此海よりエイの尾といふもの天に登ることあり、是は竜なりといふ。登らんとするとき、黒雲下がりて海の潮を巻き、支台歯台に天に登るに、雲中よりエイといふ魚の尾のごときものひらひらと見え遠ざかる。故に、エイの尾が登るといふなり」と、竜巻がエイの尾に似ていることを述べている。八重山では竜巻をイノーと呼んでいる。これはその姿が海面に尻尾を垂らすエイノオに似ているからである。
これはいかにもな推定だけれど、かなり怪しいのではないだろうか。竜巻のイノーがエイノオから来るためには、エイノオも琉球語でなければならない。ところが、谷川はこの前に、「沖縄ではエイ(アカエイ)をカマンタと呼んでいる」と書いているのだ。しかも、「カマノフタ」に由来することも聞いている。
このことは、カマンタと呼ばれる以前の呼称があったことを示しているが、それがエイであるかどうかは分からない。しかも、エイの尾に見立てるなら、エイの精霊として見立てたはずである。
むしろ、竜巻のイノーは、サンゴ礁海を意味するイノーから来ていると思える。つまり、サンゴ礁海の霊力あるいは精霊のことだ。
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