オボツと奥武
崎山理は、「青」の語源は、「中空」を意味する *awang 、「アワ」であると指摘していた(「日本語の混合的特徴:オーストロネシア祖語から古代日本語へ音法則と意味変化」2012)。「アワ(淡)」から「アヲ(青)」だ。
今回は、意味ではなく音韻の変化に着目してみる。また、崎山は、オーストロネシア語族の祖語の母音は、(a,i,u,ə)としているので、(a,i,u)の三母音を軸に考えてみる。すると、まず、awo は、awu として展開される。
awa → awu → abu → afu → au 奥武(オー)
awa → awu → abu → nbu → ubu オボツ(ツは格助詞「の」として)
奥武(オ-)について、「アワ」は、「アヲ」となった後に、「アボ」へと転訛した。私を指す、「ワ」が「バ」へと転訛することがあるように(それは琉球語に限らないようで、崎山は *awang の変化例として、サモア語の、ava「間」を挙げている)。次に、三母音化と清音化で「アフ」となり、母音に挟まれた f が脱落して au が長音化した。
吉成直樹は、オボツは、地域によっては、「オボツ」を「ボッ」、オボツ山を「ボッヤマ」と呼んでおり、「ボツ」が語根であると考えざるを得ない」(『琉球民俗の底流』)と指摘している。それにならい、また「ツ」を「山」に続けるための格助詞「の」とみなすと、「アワ」が「アヲ」へ転訛したあとに、濁音化し、次に、語頭の母音が脱落すると、「ボ」が得られる。
素人の音遊びみたいで気が引けるが、どうせだからもう少し続けると、abo の語頭の母音が脱落すると、mbo のように、語頭にN音を引きずる。これが、次に、o(u)を引き寄せて、「オボ」となったり、三母音化して「ウブ」となったりしたのではないだろうか。
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