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2016/02/19

ぶなぜー神話の位相

 多良間島の兄妹始祖神話。

 大昔、ぶなぜーという兄妹があった。ある日、畑に出て仕事をしていると、南の方から、突然、大きな波がおしよせてきた。これを見た二人は、あわててウイネーツヅという丘にかけのぼり、波にさらわれようとするところを、シュガリガギナ(チカラシバ)にしがみついて、ようやく難をのがれた。周囲を見ると、家や村も波にさらわれてしまって、たすかったのは兄妹二人だけであった。そこで、二人は夫婦のちぎりを結び、村の再建をはかった。最初に生まれたのは、ポウ(へび)とバカギサ(とかげ)であった。次にアズカリ(シャコ貝)とブー(苧麻)を産み、そのあとに人間が生まれた。
 こうして、島はしだいにもとのすがたにかえったという。
 村の西方に、ぶなぜー兄妹をまつった祠があり、住民は今もこのものがたりを語りつぎながら、島建ての神として崇拝している。『村誌たらま島 孤島の民俗と歴史』(1973)

 村誌では、ポウとバカギサについて、若水の伝承があることを記している。アズカリとブーについては、こうだ。

 アズカリとプーも出てくるが、この二つは出産と深いかかわりがあった。臍の緒をブーで結んで切り、胞衣はアズカリの中に入れて土中に埋めるならわしが近代まであった。二つとも、出産のときの神聖な道具だったのである。

 多良間島の神話は、植物との同一視の段階まで及んでいて興味深い。この神話ほど各段階を保存したものはないのではないだろうか。

 多良間では、シャコ貝をトーテムとし、カラムシ(苧麻)と人間を同一視した段階があった。あからこそ、胞衣埋めに使われることになったのだ。ここからは胞衣埋めの儀礼が、祖先に返ることであり、そこからの再生が祈願されていたことが窺える。

 また、シャコ貝を伴った埋葬におけるシャコ貝の意味も示唆される。

 中沢新一は、「神話の中ではしばしば「洪水」と「近親相姦」は隠喩関係でひとつに結びつけられていることが多い」と指摘している(「縄文・ミシャグチ・道祖神」「東北学 No.9」)。

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