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2016/02/27

葬儀の「笑い」とトリックスターの神の神話

 山口昌男は、葬儀での「笑い」について書いている。

 西アフリカのコート・デイヴォワール(象牙海岸)のアグニ族の葬礼では、ある人の死後七日七晩にわたってどんちゃん騒ぎを続け、その間にトリックスターの神の神話が語られる。私はこの文化に直接接したことはないが、スリナムの内陸地帯のアフロ=アメリカ系の集団ジュカ族の毎年の死者供養の儀礼で、夜を徹して踊り、その中で三人一組で道化の茶番が演じられているのに立ち会ったことがある。(中略)道化=トリクスターが死者と生者を結びつけるという気分はかなり普遍的なものである(後略)。(『内田魯庵山脈―「失われた日本人」発掘』)

 これは、人類学者のハッドンが、トレス海峡のプル島について、「死者の踊り」について、書いていたことを思い出させる。そこでは、仮面は最近亡くなった死者を現わすが、感情の高ぶった近親者の興奮をほぐすため、仮面はおどけて笑わせたりもしていた。(It must be remembered that these people are highly strung, excitable and very affectionate, the mere sight of the photograph of a deceased relative will cause them immediately to begin crying, and as readily can they be made to laugh. Cambridge Anthropological Expedition to Torres Straits; Ray, Sidney Herbert, 1858-1939; Haddon, Alfred C. (Alfred Cort), 1855-1940 Vol. 5.- Sociology, magic and religion of the Western Islanders, p.256)

 ここでは道化の神の神話は語られていないようだけれど、葬儀の「笑い」での仮面の役割の断片が見えてくるようだ。しかも、この仮面たちも二人組なのだ。
 

『内田魯庵山脈―「失われた日本人」発掘』

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