遠隔化する以前の他界としてのニーラ系
吉成直樹は、ニライ・カナイについて、八重山、宮古、奄美において、民俗語彙としては、カナイに相当する部分を欠く、と指摘している。
八重山、宮古の民俗語彙であるニーロー、ニーラスク、ニーレイスク、ニッラ、ニッザなどは、すべて地下の世界を表現する言葉なのである。カナイ系の語を用いるのが沖縄島を中心とする地域であることは、やはりカナイ系の言葉、中本正智が「日の屋」と解する言葉が、琉球王国の成立の前夜以前、すなわち王権が大きな意味を持つようになった時代以降に関連づけて考えるべき言葉であることを意味しているように思う(P.18)。
これをぼくたちの理解で言い換えれば、地下と地上の他界を示す「ニーラ」系に対して、「カナイ」系が付加されたのは、他界の遠隔化に対応したものだ。
また吉成は、「おもろ」の「にるや」、「かなや」の出現を検討して、「にるや」がつくる対語は、必ずしも「かなや」ではないが、「かなや」がつくる対語は、つねに「みるや」「にるや」であることを突き止めている。つまり、「「かなや」という語は「みるや」「にるや」の対語をなすために、のちの時代になって創作された後付語である」。
こうしてみると、遠隔化する以前の他界は、ニーラ系として言うことができる。
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