ジュゴン・トーテム
ジュゴンをトーテムとする例を挙げておく。他にも見つけたら、追加していこう。
トレス海峡の西部諸島に属するマビオグ島の人びとにとって、もっとも重要なトーテムはジュゴン。
ダンガル(ジュゴンのこと)氏族のおもだった男は右肩に、女はでん部にジュゴンをあらわすはん痕模様をほどこす。体だけでなく、タバコ用パイプ、腰ベルト、太鼓などにこうしたトーテム動物のモチーフをほりこむこともよくおこなわれる。(秋道智弥『海人の民族学―サンゴ礁を超えて』)
この島は、「大きなトーテムの人々」と「小さなトーテムの人々」に分かれる。
「大きなトーテムの人々」:ワニ、ヒクイドリ、ヘビ、イヌ
「小さなトーテムの人々」:ジュゴン、サメ、エイ、アオウミガメ
ジュゴンをトーテムとする人々は、初物だけは食べなかったが、二頭目からは食べていた。
もうひとつは、アラフラ海に面するオーストラリアのアーンベムランドのヤニュワ族。
ジュゴンはウミガメとともに権威ある海の生き物であり、祖先そのものである。そしてその肉は権威ある祖先の食物であり、自分たちの食物でもあると位置づけられている。(秋道智弥『漁撈の民族誌』)
たったふたつだが、両者は比較的近い。トレス海峡には、他にもジュゴンをトーテムとする島人がいるのだろう。
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