「おもろそうし」のザン
「おもろそうし」で、ザン(ジュゴン)に関する歌謡を探すと、ふたつ目に入る。
9-505(30)
一 守り合い君
君にしやが いそこ
波 つり*寄せ つり合わちへ
又 渡嘉敷の真ころ子
真ころ子は 根 しやり
又 津口の潮の
いふちへ 上がて来れば
又 新麦が
おろ麦が 穂花
又 一の艫襲いぎや
天のもの/\しや
又 亀 捕てる
ざん 捕てるてやば
又 取らんてゝ
知らんてゝ 知られゝ
*二ておすこねる
一 もりあいきみ
きみにしやか いそこ
なみ つりよせ つりあわちへ
又 とかしきのまころく
まころくは ね しやり
又 つくちのしゆの
いふちへ あかてくれは
又 あらむきやか
おろむきやか ほはな
又 いちのともおそいきや
あまのもの(/\)しや
又 かめ とてる
さん とてるてやは
又 とらんてゝ/しらんてゝ しられゝ
渡嘉敷島でもジュゴン猟は行われた。「潮が海岸の砂浜に上がってくると(津口の潮の いふちへ 上がて来れば)」というのは、満ち潮を指すだろうか。それはまだザン探索の頃合いになる。「渡嘉敷の真ころ子」というように、立派な海人の仕事だったのが窺える。
うちいではとまりみぢへりきよが節
11-650(95)
一 こまかの澪に 降れ 見物
又 久高の澪に
又 ざん網 結び降ろちへ
又 亀網 結び降ろちへ
又 ざん百 込めて
又 亀 百 込めて
又 ざん 百 取り遣り
又 亀百 取り遣り
又 沖膾 せゝと
又 へた膾 せゝと
又 手楫 選で 乗せて
又 沖走い立ての 競いて
又 干瀬走い立ての 競いて
一 こまかのみおに おれ みもん
又 くたかのみおに
又 さんあみ むすひおろちへ
又 かめあみ むすひおろちへ
又 さん ひやく こめて
又 かめ ひやく こめて
又 さん ひやく とりやり
又 かめ ひやく とりやり
又 おきなます せゝと
又 へたなます せゝと
又 てかち ゑらて のせて
又 おきはいたての いそいて
又 ひせはいたての いそいて
久高島沖でも行った。久高は海人の島だから不思議はない。「沖膾」、「へた膾」というのは、獲り立ての獲物をその場でなますにすること、と解説されている。そういうことがあり得たのに関心をそそられる。
「干瀬走い立て」は磯釣り船。ネーミングがいいね。
外間守善 『おもろさうし (上)』
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