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2016/01/12

ソロモン諸島のカツオの位相

 ソロモン諸島でのカツオの位相を確かめてみる。 

 ソロモン諸島国ではさまざまな動物が聖なる存在として扱われ、しかもしばしばクランのトーテムとされたり、祖先と同一視されていた。代表的なものとしては、サメ、ワニ、ヘビ、カツオ、グンカンドリ、キングフィッシュ(サワラ)があげられる。とくにサメにたいする観念や信仰には顕著なものがあり、サメは祖先の生まれ変わりとされけっして食べられることはなく、人びとの守護者的存在であるとするのは広くみられる現象である。(田井竜一「伝統的な宗教と儀礼」)
 ソロモン諸島のテシコピア島では、カツオがいなくなる理由は、カツオが一般にアトゥアとよばれる霊によって支配されていることや、死んだ首長がわざとカツオを島によばなかったからだとされている(Firth, 1967)。疑餌ばりに特殊な力、マナが内在し、首長がその疑餌ばりを特権的に保有することを認めた点も特徴としてあげることができる。

 カツオが食物として高い価値をもつだけでなく、超自然的な属性をもつ魚であることは、いくつもの事例に見い出すことができる。たとえばソロモン諸島の海の霊は、半人半魚の形をしているとイメージされている。その頭はカツオの形をしている(Codrington, 1972)。
 
 いっぽう、人は死ぬとアガロと呼ばれる霊になると考えられており、とくにカツオ釣りの名人の死霊はサメの形をしており、人びとの海上における安全と海の幸、カツオをもたらすとされた。人びとは水葬にふした死体をサメが捕食することや、カツオがいつもサメを伴って発見されることを知っているのである。カツオの初物は祖先の霊であるサメに捧げられるとともに、儀礼を執行した司祭だけがそれを儀礼的に食べる。ハワイでも、漁師の崇拝する魚のカミはカツオ、サメ、イルカなどの形をしていると考えられていた(Titcomb, 1972)。

 カツオに重要な価値が与えられていたことは、カツオをめぐる多くの禁忌があったことからもうかがうことができる。とくに、カツオ漁には女性のかかわりが徹底的に拒否された。もしも月経中の女性や妊婦がカツオを食べると、島にカツオがやってこないとか、カツオはその眼がみえなくなり、釣りばりにかからないとも考えられた。また、ハワイ諸島では、カツオは司祭や王、あるいは首長のみが初物を食べたり、禁忌を解除したさいに食べることのできる神聖な魚とされていた(Titcomb, 1972)。(秋道智弥『海洋民族学』)

 カツオは神聖な魚。祖先とされることもあるが、鮫には叶わない。しかし、カツオは鮫を伴うので、同一視される面もある。

 島人はカツオを食べる。日常的に。成人儀礼は、カツオを通して行なわれる。カツオへの変態も思考されている。それは海の死霊の頭部がカツオであることにも示されている。カツオを食べる、だからカツオになる。死後、それが明瞭になる。成人儀礼では、そのカツオへの変態が行なわれる。

 ソロモン諸島では、死は「移行」の段階にあり、動物への転生信仰がある。そこで、成人儀礼では、カツオへの転生が演じられる。

 カツオは女性に対してネガティブに働く。


『ソロモン諸島の生活誌』

『海洋民族学―海のナチュラリストたち (Natural History)』

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