ジュゴンは添い寝して乳をやるのか
髪を梳るという話もあるが、ザンのメスは一尺くらいの赤いたてがみをもっている。それよりもいっそう人間を思わせるのは、二つの盛り上がった乳房で子どもに乳をやるすがたであろう。人間が添い寝して乳をやるのとおなじように、ザンのメスは身体をよこたえ、乳をやる、かつての目撃者は語っている。(『神・人間・動物』)。
まいどのことながら、谷川健一の出典不明には泣かされる。これは、谷川が直接聞いた話なのか、それとも伝聞情報なのか。
一方では、
ジュゴン=人魚となった理由として(中略)子供を鰭で抱いて乳をや飲ませている姿が人間に似ているからだともいわれている。これについては、多くの動物学者は、そういう姿が観察されたことはない、と否定的である(浅野長雄、松浦義雄、内田憲太郎)。浅野や松浦は、ジュゴンを強いて擬人化して考えたからだろうと言っている。(『日本の「人魚」像』)
こうも言われているからだ。情報や引用の扱い方は恐ろしいものだと思う。たびたびあいまいなため、谷川の書くものの資料価値は、落ちざるを得ない。
ただ、「ジュゴンを強いて擬人化して考えた」という判断には違和感がある。強いてそうしなくても、人は旺盛にそうするものだと思う。
気分を変えると、『日本の「人魚」像』には、海牛類の分布が載っている。
これとサンゴ礁の分布を合わせてみると、重なりあっているのが分かる。(cf.『サンゴとサンゴ礁のはなし』(本川達雄)。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント