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2016/01/20

ジュゴン予祝の仮面踊り

 トレス海峡のマビオグ島で、ハッドンが目撃した仮面の踊りの原文があったので、拙いが、抄訳しておく。

 ぼくが想定したいのは、こうした仮面踊りが、スクの季節に行われたことだ。

以下、訳文。

 マビオグ島の人々は、カップ(Kap)と呼ばれる踊りを行なう。kekと呼ばれる星がモア島の上に現れる日の出前、その頃は、南東の風が吹き、すべての食物が実るころだ。踊りは三夜続く。踊り手は、亀の甲羅でできて、人間の顔を象徴化したたくさんの種類の仮面をつけている。

 ムドゥ・カップは半日、続く。ふたりの男は代わる代わる一つの仮面をつける。ジュゴンの祭台は、敷物の目隠しの前にあり、ジュゴンの祭台の前には見物人がいる。見物人には、みんなが送ったご馳走が配られている。

 踊り手の一人は、目隠しの後で、仮面のついた木の輪か杖を肩にかけて、ココナツの葉でできたペチコートをつけ、右手にはココナツの葉の旗をもつ。そして目隠しの前に出ると、置いてあるジュゴンの銛を拾い上げてジュゴンの祭台に行く。そして見物人は、ダブルスタッカートの太鼓に合わせて歌い、仮面男は銛を振る。

 Mask

 その意味は分からないけれど、歌は繰り返される。仮面男はそれから踊りながら砂浜へ出て、目隠しの後ろへ行くとすぐに銛を弓と矢に代える。彼はスキップするような動きで踊る。踊りを繰り返す前に、彼は片方の足をゆっくり持ち上げる。この踊りのあいだ、仮面男はココナツの葉の旗を掃くように動かし、太鼓は打ち鳴らされ、見物人は歌う。

 女たちは家に戻る。他の男が目隠しの後で仮面をつけ、前に出て、祭台にのぼる。太鼓が打ち鳴らされ、女たちは戻る。仮面男は祭台に座る。しかし、人々が太鼓に合わせて最初の歌を歌うと、彼は銛を振り、そして祭台でしゃがみ、また銛を振る。それから祭台から飛び降り、ジュゴンで槍で突くように銛を振る。次の踊りでは、軽く飛び上がるような感じで前へ後ろへ動き、銛を前へ後ろへ突く。最後に、彼は目隠しの後へ行き、カップは終わる。

 わたしはたびたび、カップは「ただの遊びで休日みたいなもの」と聞かされたが、情報提供者は、ユーモラスでお祭的な面だけに目を向けて、この踊りが意味するものを理解していないのが分かる。このジュゴン漁のパントマイムは、明らかに、彼らの漁撈活動に結び付けられているのである。

Cambridge Anthropological Expedition to Torres Straits; Ray, Sidney Herbert, 1858-1939; Haddon, Alfred C. (Alfred Cort), 1855-1940
Vol. 5.- Sociology, magic and religion of the Western Islanders, p.339


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