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2016/01/09

アオリキ島のカツオ・イニシエーション

 ダヴェンポートによるソロモン諸島アオリキ島のカツオ儀礼の様子。彼が記録したのは、1966年の4月から9月までのイニシエーションで、6歳から12歳までの少年が参加している。ところどころ怪しいが、訳しておく。

 カツオとの一体化を核にした儀礼内容は、ジュゴンを考えるうえでも示唆的だと思う。

Male Initiation in Aoriki, Man and the Spirits in the Eastern Solomon Islands文章のみ

 カツオ・カヌーが通過点を通ってカヌーハウスに戻るとき、乗組員は、漁の成功の如何にかかわらず、最初はパドリングの姿勢で、後には叫びながら知らせる。うまく言ったといえば、それはたちまち広がって、ほとんどの人がしていることを止めて、着岸を見に来てしまう。男はカヌーハウスの前に集まり、女たちは、カヌーハウスの前に行くこともカヌーに近づくことも許されず、見晴らしのよい場所から眺める。イニシエーションの場合、捕れたカツオの数と同じ数のグループが、儀式のためにカヌーハウスに連れて行かれるのは本当だ。はじめのイニシエーションを受けるのは、通常、その時のイニシエーションを世話を名乗り出た最も熱意のある父の息子が受けることになる。少年はそれぞれ、カヌーに戻って、船底の魚たちの中に仰向けになって、頭を上にした一匹のカツオを抱きついた状態で寝かせられる。女たちは、近くの浜辺や干瀬から、泣き叫んで、「彼女たちの息子」から「カツオの場」nに隔離されるのを抗議する。少年はカヌーハウスに隔離されるので、女たちは数ヵ月、子供を見ることができない。そして戻ってきたとき、彼らはもはや子供ではなく、霊的な意味で大人になっている。儀礼のあいだ、カツオカヌーで最初に海へ行ったときには、少年の母は素早くヤム芋を焼く。カヌー航海から戻ると、少年はカヌーで、次の最も重要なイニシエーションを持ちこたえるために、記念の食べ物をひと口食べる。

 カヌーから変わって、イニシエーションはカヌーハウスの前にある祭台で行なわれる。全てのカツオが最初に置かれるのもここになる。参加者の父か別の年長の男が、カヌーからカツオの頭を左にして、両腕で抱きかかえて、祭台のそばに立っている別の男に運ぶ。渡される男は、儀礼のなかで最も神秘的な部分を実行する、代々引き継がれた力を持っている。日常の生活のなかでは、彼はふつうの男だけれど、儀礼のなかでは聖なる人間であり、ふさわしい敬意と尊敬を受けている。変態の儀礼は、いくつかの型で9回(?)行なわれる。捕ったカツオの血を、カツオの口から数滴、少年の口に落とす、カツオの鼻先を少年の身体につける、あるいは、カヌーから捕った潮水をカツオの血に混ぜて塗る。しかしどの場合でも、儀礼を行なう者は、ふさわしい呪文が唱えられる。

 1966年の最年少の少年たちは、儀礼の執行者に背を向けて、彼は、それぞれの頬、肩、身体の側面、尻、太ももと膝に触れる。年長の少年たちは、彼らの口に血を受け取る。後者の方の効き目は、年少の少年たちは体力を回復できないのではないかと思うほど強力であるように感じられる。呪文で力をつけられたカツオのエッセンスを受け取ると、少年たちは、とても歩くことすらできないほど弱っているかのように、カヌーハウスに準備されたベッドに連れられる。カツオに触れた者は、数時間はそこに残り、血を受けた者はさらに長くそこで静かにしていなければならなかった。儀礼から受けた衝撃から身体を守り、儀礼のあとにすぐに動き回れるようにするために。それはイニシエーションを受ける者を危険にさらす可能性がある。イニシエーションを受ける者は、家族とふつうの生活に戻る印になる主な祝宴の準備が整えられるまで、住居地域の全ての女と環境から何か月も隔離されていなければならない。

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