「イノーの寄物(新垣源勇)」1
新垣源勇の「イノーの寄物(ユイムン)・遭難者のことなど (<特集>イノーの民俗)」「民俗文化 2」1990)から、ジュゴンについて。
名護城ウンジャミの時に歌うウタカベ。
うらめぐりめぐて 浦々を廻って
じやんのくつふむ ジャンのくつ踏み
じやんのくつふむ ジャンのくつ踏み
をすかぜにふかさん 潮風にも吹かさない
てるてだにもふかさん 照る日にもほさない
新垣はこう書いている。
この歌に出てくる「ざんのくつ」は「ジュゴンの口」と解釈されているが、「ジュゴンの骨」とも解される。砂浜にちらばっている珊瑚の枝を「ジュゴンの骨」と言ったのではないか。ジュゴンも亀も沖縄では神聖なものとされている。潮風にも吹かさない、太陽にも晒さないと言った。
これは面白い視点だと思う。当たっていなくても、少なくともジュゴンが聖なるものであるという本質には触れている。そしてこれが沖縄島北部の歌謡だということも、示唆するものがある。松井健は、ザンクチは、「さまにある角サンゴの小さな棒をいうが、これは、ジュゴンの骨という意味らしい」と指摘している(「マイナー・サブスシテムと琉球の特殊動物」)。
与論島もウンジャミにも、ザンは登場していたのかもしれない。
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