蝶の位相
不足していることは後で補えばいいとして、ここで蝶の位相を考えてみる。それには、蛇とアマンと比べてみるのがいいはずだ。
まず、蛇と蝶は、どちらもシャーマンが、一体化する対象として選んでいた。これは、アマンには見られない。このふたつについては、蛇-人間、蝶-人間という表象の片鱗を窺わせる。
また、「人間の使い」になるのは、アマンのみに見られる。これらのことは、人間とのかかわりのなかでは、アマンが最も新しいことを示している。
蝶とアマンに共通するのは、これが少なくとも定着以降に、家屋で殯を行なった段階を契機に人間との関係をもつことだ。微細にみれば、蝶はアマンに先立つはずだ。蝶とは、家屋内の殯でも出会うが、アマンに出会うためには、海岸近くを葬地としなければならない。
すると、必然的に、人間との関係の順序でいえば、蛇、蝶、アマンの順になる。蝶は、アマンと蛇のあいだをつなぐ動物としてたち現われることになる。
また、蝶形骨器の装着は、霊魂の成立を前提にしていると考えてきた。このことは、霊魂の化身と見なされることと符合している。「霊魂の化身」と言われることには、深い理由があったのだ。
蝶形骨器の製作は、貝塚時代第4期に集中し、5期以降はこれまでのところ見つかっていない。その理由は分からないけれど、蝶のモチーフは、そこで途絶えたのではなく、三角形のモチーフとして生き続けていったのだ。
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