『サンゴとサンゴ礁のはなし』(本川達雄)
たくさんのイメージの広がりを与えてくれる本だった。霊力思考を発揮させて、「似ている」を見つけておきたい。
褐虫藻はサンゴの細胞中におり、そこで光合成をしている。サンゴの細胞の半分が褐虫藻で埋まっているくらいたくさんの褐虫藻が入り込んでいる場合もある。だからサンゴは半分植物だとみなせるものなのである。
サンゴは植物に似ている。
1.固着している
2.雌雄同体が多い
3.配偶行動がみられる
4.精子と卵をばらまく
5.無性生殖を行なう
メモ1。サンゴは、植物的な動物。人間は、植物を内包した動物。
サンゴと褐虫藻の共生関係が、きわめてうまくいっているため、サンゴは石の家をどんどんつくっていく。そしてその表面を覆って守り、かつ清潔に保つために、粘液の膜をどんどん分泌する。この粘液がサンゴ礁の動物たちの餌となるのである。
褐虫藻は光合成で作り出したものの九割をサンゴに手渡す。サンゴ礁は共生の宝庫。
メモ2。サンゴ岩で家を作った島人は、褐虫藻に似ている。ただし、褐虫藻のようにサンゴにメリットを与えられているかはきわめて怪しい。
サンゴの個体はポリプ(=サンゴ虫)。ポリプは一センチ以下の小さなもの。一個のポリプは、目を出したり体を分裂させたりして、どんどん自分の隣にポリプを増やしていく。それぞれのポリプは自分の石のコップをつくるので、多数のコップが集まると群体となる。一個のポリプは小さいが、群体は10万個以上のポリプが集まり、直径数メートルに達するのも稀ではない。まさに、「石造りのマンション」。ポリプ間には神経の連絡もあり、群体全体があたかも一個体のように協調した行動を示す。ポリプは、ポリ(たくさんの)+プス(足)というギリシャ語に基づく。
サンゴが死んでも、石造りのマンションは残り、サンゴ礁という岩礁になる。岩礁にはさまざまな生物たちが住む。
メモ3。死んだ造礁サンゴは島を覆い、島を「石の島」にした。
サンゴは動物。クラゲやイソギンチャクの仲間で、刺胞動物門に属する。われわれは脊索動物門。高次のレベルにおいては異なる動物。サンゴは動物界。褐虫藻は原生生物界。界がまったく異なるもの同士が、仲良く共生している。
宝石のサンゴは造礁サンゴの住めない深海に棲息。英語のコーラルは、宝石のサンゴを指す。「珊瑚」も同じ。
メモ。だからカタカナで、サンゴと書くわけか。
多くのサンゴは、一個のポリプが卵も精子もつくる。雌雄同体。
サンゴの群体は、樹枝状、葉状、塊状、被服盤状の四種類。
動かなくても、食べなくても、息をしなくても、トイレにいかなくても生きていける生活! われわれには想像もできない日々をサンゴは送っているのですね。
群体を構成している個体同士は、無性生殖でできたもので、同じ遺伝子組成を持つ。つまり、クローン。群体は不死身。個々のポリプには寿命があるが、群体としては定まった寿命はない。サンゴのポリプは死んでも石の殻を残し、その祖先の残した家の上に、生き残った群体が新たに家を建て増す。
メモ4。これは母系社会のあり方とそっくり。サンゴは再生信仰を支える。
ただし、初夏満月の夜10時、産卵をし有性生殖も行う。使い分けている。
琉球列島のサンゴは400種類。固有種の数は世界一。造礁サンゴの北限は千葉県館山。世界最北のサンゴ礁は長崎県壱岐(2005年に発見)。
サンゴ礁とは、熱帯の浅い海域でサンゴをはじめとする造礁生物が成長し、それが死亡することによって残された石灰質の骨格が固められて、波浪に耐えるように形成された浅瀬。
「サンゴ三角形」。フィリピンを頂点として、インドネシアからニューギニア、ソロモン群島に伸びる線を底辺とした三角形で囲まれた海域。
メモ5。この海域の延長線に南ヤポネシアの琉球弧がある。
生物が死ぬと、熱帯の海では、遺体はすみやかに分解されてしまい、生物体に含まれていた燐も窒素も海水中に溶け出して薄められ、他の生物たちが再利用しにくくなります。また、遺体は分解されつつ下に沈んでいきますが、熱帯では表面の海水は温められて軽いため、下の水と混ざり合いません。だから、いったん沈んだ燐や窒素は、海の深みに行きっぱなしになってしまい、熱帯の海は栄養に乏しい海(貧栄養の海)になりやすいのです(p.99)。メモ6。サンゴ礁は、貧栄養の海に出現した巨大な自然の増殖だった。
褐虫藻が共生関係を結んでいるのはサンゴだけではなく、シャコガイも。星砂になる有孔虫も。
メモ7。トーテムだったシャコガイも、サンゴと似ている。
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