「沖縄における寄物(ザン)」(島袋源七)
島袋源七は、ザン(ジュゴン)について、こう書いている。
ザン(儒艮)は群をなして寄るのではなく、二三匹或は数匹が、リーフの割目に沿うて時たま浅瀬まで上って来る事がある。漁夫はこれを捕獲しても家に持ち帰らず、浜で料理して食うに過ぎない。家に持帰ったら、その家の主婦が死ぬか、家族の者が海において不慮な災難に逢うものとされている。ザンが上ると時化が来るといわれ、ノロや神人に世直しの祓いをして貰う事になっている。(島袋源七「沖縄における寄り物」「民間伝承」15巻11号(通巻162号)、民間伝承の会、1951年11月)
島袋は今帰仁の出身で、山原について書いてきた人だから、これは宮古や八重山のことを書いたのではないだろう。古宇利島の兄妹始祖神話には、海馬としてジュゴンが出てくるから、これも国頭のこととして書いていると見なしてよいのだろう。
そしてこの記述はとても重要なものだと思える。島袋は、それと気づかないうちに、重要なことを書き残したのだ。たぶん。
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