ヨナタマ伝承の位相
ヨナタマ伝承からは、二つの相反する考えが導かれる。
・ヨナタマ伝承は、始祖神話や物事の起源と結びついていない
・始祖神話と結びつかないところからは、トーテムの対象からは外れる
・また、トーテムとするには、ヨナタマは「珍しい」ので、日常的に接する動物ではなかった。いや、トーテムとして親縁を結ぶには、ヨナタマを忌避する気持ちが働いて珍しくさせた。
・しかし、トーテムに対するように、ヨナタマを食べることは忌避されている。
・ヨナタマは話せる。ヨナタマと赤ん坊は、共鳴している。また、母と子、ヨナタマと「ヨナタマ」と呼びかけるものが対応している。人間と対応させて考えている。沖縄島ではジュゴンを「赤子魚」と呼ぶ。
・また、ヨナタマが話せるということは他の魚は話さないということだから、この伝承自体は、人間と自然の分離が進んだところで語られたものだということになる。
ここで、ヨナタマに「ジュゴン」を当てはめると、そのまま通用する。ヨナタマは、ジュゴンのメタファーとしての位置を占めている。
それなら、この伝承をザン(ジュゴン)として語らずに、ヨナタマとして語ったのはなぜだろう。それは、ジュゴンの持つ両義性そのものが、ザンと名指すのをためらわせたのかもしれない。
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