『珊瑚礁の思考』、装丁
出版社から装丁が届いたので、ここでもようやく紹介できます。一昨年の春から取り組んできた「文字を持たなかった時代の琉球弧の精神史」を、『珊瑚礁の思考』として刊行します。
ブログに書いてきたのは、調べものの備忘だったので、さぞ読み辛い思いをされてきたことと思いますが、ようやくまとまったかたちにすることができました。
現物はもっと美しい装丁の背景は、石垣島の写真家・仲程長治さんの手になるものです。本書の世界観をビジュアルにするとまさにこれ!と感じたのですが、縁あってコラボさせてもらうことができました。感謝。
目次を書いておきます。改めてみると、なんて無謀なことに取り組んだんだろうと身震いしますが、やっている最中は夢中で、そこに思い至らなかったのが正直なところです。ただ、島人として感じるべきことに突き当たっているという手応えは充分にありました。読む方にそれが伝わればいいなと思っています。
ブログの「琉球弧の精神史」は続けているように、これで完了というわけではなく、まだまだ続くことでしょう。なにしろ、「文字を持たなかった時代」は、琉球列島の考古学は確定していませんが、数万年の時間の蓄積を持っているのですから。もうしばらくしたら、発売をご案内できると思います。
『珊瑚礁の思考―琉球弧から太平洋へ』
はじめに 「ネシア」の野生の精神史
文字を持たなかった時代へ
霊力思考と霊魂思考の編み物
琉球弧からヤポネシアへ、太平洋のネシアへ
ざわめきに背中を押されて
第Ⅰ部 円環する生と死
1.われらアマンの子-祖先
アマンから生まれた
アマン―人、人―アマン
流動的エネルギーとしての霊力
心を残しては語れない
霊力思考
化身
霊魂思考
身をやつした姿
2.蛇からアマンへ-脱皮
蛇の位相
脱皮つながり
トーテムの関係図
全ては身に起きたこと
わたしはジュゴン
3.いずれ、生まれ変わる-再生
トロブリアンドの再生
琉球弧の再生
アマンに見ていたもの
母系社会と「をなり神」
わたしたちの盲点
兄妹始祖神話の位相
再生と祖先崇拝
食人(カニバリズム)思考
第Ⅱ部 「あの世」の発生と「霊魂」の成立
4.境界としての洞窟-風葬
風葬とは何か
骨の信仰
「キャンプ地を去る」から「家を去らない」まで
なぜ、去ったのか
「死者」と「家」の同一視
移行としての生と死
もうひとつのあり方へ
風葬の成立
「喪屋」の発生
境界モチーフの展開
5.包含するニライカナイ-他界
二つのベクトル
地上と地下
洞窟を塞ぐ
反転
海上はるか彼方へ
包含するニライカナイ
厚い「移行」の層
6.マブイの成立と協奏-霊魂
霊魂の成立
霊魂の協奏
マブイとセジ
霊力思考と「こころ」
霊魂思考と「あたま」
病の三類型
マブイ込め
死の前後1・添い寝
死の前後2・悪霊払い
死の前後3・霊魂の除去
死の三角形
7.クチとユタの原像-呪言
唱えることは実現すること
自然のイメージ的身体化
呪言(クチ)の世界
反復するイメージ的身体化
原ユタ
憑依型シャーマン
生き残ったユタの可能性
第Ⅲ部 生と死の分離を超えて
8.まれびとコンプレックス-珊瑚礁
人間と植物の同一視
反作用を繰り込む
「女の作った御馳走」
むしろ、もたらされる恵み
人見知りの基層
珊瑚礁の発生
母なる珊瑚礁
珊瑚礁の思考
9.仮面がつなぐ-来訪神
希薄な死
希薄な同性愛
再生の変形
来訪神の深度
仮面は遡行する
仮面の発生
原仮面
10.人、神となりて-御嶽
守護する頭蓋骨
円環が破れる
「御嶽の神」の出現
置き換えられた「あの世」
世界は変わってしまった
生き神の出現
神の変形
島世
あとがき
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