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2015/11/22

霊魂成立の段階

 ぼくたちは、貝塚時代前3期(約4500年前)に、琉球弧では定着期に入ったのを知っている(伊藤慎二)。また、崖葬墓が確認されるのは、貝塚時代前4期(約3500年前)からだ(cf.「琉球列島における先史時代の崖葬墓」)。また、伸展位の埋葬が確認されるのも、前4期だ(cf.「南西諸島における先史時代の墓制」(新里貴之))。さらに、蝶形骨器が確認されているのは、貝塚時代前4期(約3500~約3000年前)に集中する(cf.「蝶形骨器の時代」)。

 前3期 定着
 前4期 崖葬墓、伸展位埋葬、蝶形骨器

 ここから分かるのは、琉球弧において、生と死の「共存」の段階は貝塚時代前3期で、前4期以降に「区別」の段階に入るということだ。また、ぼくたちは蝶形骨器の出現に霊魂の成立を見てきたから、それが前4期に集中していることには目が止まる。

 生と死が区別の段階に入り、死者を洞窟に運ぶようになったことと、霊魂の成立は近しいという示唆を、ここから受け取る。洞窟のくびれを通って「あの世」へ行くと考えることと、霊魂を思考するようになることとは、相関があるようだ。そこに、必然的な関係は思い描けないが、「あの世」へ行くのは霊魂と捉えるのは考えやすいことは確かだ。

 マオリでは、生と死の分離以降は、霊魂だけが「あの世」へ行き来できるようになったと語られる(cf.「入墨と霊魂」)。これは、生と死の「分離」の段階には、すでに霊魂は成立していたことを示している。そこで、生と死の「区別」の段階で、霊魂は成立したと仮定しておく。

 またここに崎山理によるオーストロネシア語族の北上を重ねると、

 前3期 定着 ハイ期
 前4期 崖葬墓、伸展位埋葬、蝶形骨器 ヨネ期

 となる。定着が進み、生と死が「移行」の段階に入ったことと、オーストロネシア語族の北上が重なっているということは、琉球弧の精神史にとって、地下の他界を持ち込んだのは、この語族だった可能性を示すものだ(cf.「日本語形成におけるオーストロネシア語族の要素」)。

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