『沖縄彫刻都市』
言われてみれば、琉球弧はコンクリートの島々だ。
琉球弧はほとんどが石灰岩の島で、見方によっては島そのものが天然のコンクリ―トなのだ。
この見立てはとてもいいと思う。
「花ブロック」と呼ばれる穴の空いたコンクリートブロックは、コンクリートブロック以上に沖縄の景観を特徴付けているかもしれない。元来、花ブロックも、アメリカ軍が基地建設のために沖縄に持ち込んだもので、プライバシーの保護と日除け、通風のために採用した、台風で飛ばされないスクリーンだった。(中略)沖縄の民間建築で使われている花ブロックは、中国建築の透かし窓のように見える。中国庭園などのイメージが、古くから沖縄に定着してたからだろう。バルコニーに庇、階段、窓に取り付けられ、花ブロックが建物の外周をひだのように繰り返し取り巻いている様子は、アメリカから来たモダニズムなのに、どことなく縄文土器のようだ。その姿は、アボリジニやケルトが内部視覚によって描いた幻覚模様にも通じるところがある。
この本からの引用ではないけれど、たとえば名護市庁舎も花ブロックのひとつだ。
「花ブロック」は、琉球弧の境界モチーフの展開と見ることもできる。アメリカ軍由来であろうと、中国建築の影響が認められようと、日除けや通風、台風の防禦の機能とは別に、ここには、洞窟にシンボライズされる「穴」のモチーフが流れている。
それは、生者と死者の空間を分けた、洞窟の穴を発生の起点として、「太陽が穴」や、グスクのアーチ門としての展開されてきた境界のモチーフなのだ。そのモチーフが「花ブロック」にも底流している。そうではないだろうか。花ブロックは、琉球弧の精神史の現代の表現型なのだと思う。
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