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2015/10/31

『現代文学にみる沖縄の自画像』

 書名が示すとおりの「沖縄の自画像」を知りたくて読んだのだが、そういう本ではなかった。もとより、琉球新報企画の「戦後を読む」という連載として書かれているのだから、個別の作品の紹介に留まるのはやむを得ないのかもしれない。

 ただ、それでも単行本化に当たっては、著者、岡本恵徳によるこれら作品を通じた自画像作成の試みは期待したかったところだ。

 特徴としてなら、岡本が言及していることはあって、沖縄戦の小説は少ない、敗戦直後に取材した作品では沖縄内部で書かれたものが少ない。「アメリカ」、「復帰」についてはすぐれた作品が少ない。七〇年代以降に女性作家の活躍が目立つ。沖縄人のアイデンティティを探る作品は多彩で、復帰後に見られる。こういうことだった。

 岡本に望めないとしたら、作品を紹介した文章から、沖縄の自画像を思い浮かべられるかと言えば、それは覚束ない。印象としてやってくるのは、「アメリカ」や「基地」との交渉が描かれているというもので、沖縄人の自画像制作に関わるような手応えは、少なくとも作品の紹介からは得にくかった。

 なんだか無い物ねだりをしているような気がしてくる。もっとも、ひるがえって奄美の自画像は?と聞かれたら、それも回答に窮してしまうだろう。それは、個々のシマ、島ごとに描くしかないと思うばかりだ。そう思うと気づくのは、この本で紹介されているのも、沖縄島中心の作品であり、小さな島々のものは少なかったことだ。それは埋もれているということだろうか。書かれていないということだろうか。こう問えば、それは書かれたものが少ないのだ。

 きっとわざわざ文字にするより、唄と踊りに表現されていると言えばいいのかもしれない。それが島人の自画像だろう。

『現代文学にみる沖縄の自画像』

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