『パクス・デモクラティア―冷戦後世界への原理』(ブルース・ラセット)
ブルース・ラセットは、1946年から1986年の歴史をもとに、二国間の戦争行動について、整理している。軸jは、両国とも民主的である場合と、少なくとも一方が非民主的である場合だ。
紛争がエスカレートする確率
1.両国とも民主的である場合
武力行使の威嚇まで
0.05%
武力の誇示まで
85.7%
武力の行使まで
57.1%
戦争まで
0.0%
2.少なくとも一方が非民主的である場合
武力行使の威嚇まで
0.16%
武力の誇示まで
94.4%
武力の行使まで
77.9%
戦争まで
4.6%
ご覧の通り、民主的国家同士は、戦争をすることはほぼない。しかし、「民主的国家は、他の種類の政治体制との関係においては必ずしも平和的ではない」。
ラセットが挙げている数値をもとにすると、紛争が発生した比率は、
1.両国とも民主的である場合
0.36%
2.少なくとも一方が非民主的である場合
2.78%
となる。
ラセットは、民主制と平和との相関を確かめるために、三つの仮説を検証している。
一 対象となる一組の国家(二個群 dyad)の双方が民主的であればあるほど、その両国間で武力紛争が起こる可能性は低く、仮に起きたとしても、その紛争がエスカレートする可能性も低い。このような効果は、国家の富、経済成長、隣接性、同盟あるいは、能力の相対的規模といった国家の持つ属性とかかわりなく起こる。二 両国それぞれの国内政治過程に、民主的な規範がより深く根づいていればいるほど、紛争が起こる、あるいはエスカレートする可能性は低い(規範/文化的モデル)。
三 両国における制度的制約が強ければ強いほど、紛争が起こる、あるいはエスカレートする可能性は低い(構造/制度的モデル)。
美味しいところだけつまみ食いすることになるが、検証の結果は、「一般的な民主制の効果に関する仮説一と、民主主義の規範の効果に関する仮説二を強く支持し、制度的制約に関する仮説三に関しては、より弱い支持が示されている」、ということだ。
著者の主張で、最も重要だと思えるのは次の箇所だ。
アメリカとその同盟諸国は、完全に旧体制を打ち負かした。民主的政府を強固なものにするために、連合国は、(不完全であったにせよ)旧エリートを権力の座から追うのに大きな努力を払った。しかし、敗戦国には、過去の民主制の経験に由来する、人間的また制度的形態の内に、民主制を建設する基礎となるものがあって、連合国はそれを利用することができた。「やつらと戦え、打ち負かせ、そしてやつらを民主化しろ」というモデルは、現在の行動の基礎としては、如何ともし難い欠陥がある。それは、恐らく、全くうまくいかないだろうし、それが必要とするような種類の努力を行なおうとする者はない。民主制のための十字軍は、適切ではない。
民主的な国家同士は戦争をしない。だからといって、そうではない国家に民主制を強制してもうまくいかないし、そうすべきではない、ということだ。
『パクス・デモクラティア―冷戦後世界への原理』(1996)
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