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2015/10/18

『日本の転機―米中の狭間でどう生き残るか』(ロナルド・ドーア)

 NPT(核不拡散条約)は、戦争が起きる確率をむしろ高める効果が大きい。かつ、NPTに脈はない段階まできている。この機能不全を前に、こう考えられなければならない。

戦争のない世界への道のりは-ウェストファリア条約、ウィーン憲章、国際連盟の形成、国連の形成-個別国家が主権の一部を、平和という公共財のために、犠牲にすることを意味した。NPTもその例に漏れず、新体制として考えられる代用制度は、ある面で主権を緩め、同時に他の面で、もう一歩、今まで考えられなかった主権の犠牲を要求する。

 こうしてロナルド・ドーアが、素人の夢想と受け取られることは承知で提示したのは、NPTの逆張りともいうべき、核の傘の普遍化だった。(cf.「『戦後入門』(加藤典洋)」)。

 この提案が単なる夢想にならないためには、雰囲気が重要だ。そのひとつは、

 日本のある外交官が、「普天間の問題は、爆撃機が町の真ん中に墜落してくれなければ解決しないだろう」と言ったそうだが、同じように、どこかでならず者国家が核兵器を一発使って初めて、一九六〇年代のような条件がまた揃う-ということなのかもしれない。

 これは冗談ではない。冗談ではないが、ドーアは、

その時に備えて、現実的に機能しそうで、大国にも小国にもアピールするような代替案はいかに可能なのか、今から議論することは無意味ではないと思う。

 と続けている。そう、こういった議論が必要だと思う。

多くの日本の防衛専門家を不眠症患者にしている原因は、北朝鮮ではなく、果たして中国からの攻撃に対しても米国の核の傘が確証されているかどうか、いま確証されているとしても、ミサイル防衛のバランスが中国有利に変わった場合、依然として大丈夫なのか-ということである。

 こういう不安に対するためにも。

 この本は、2012年に出版されたものだ。

 
『日本の転機―米中の狭間でどう生き残るか』


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