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2015/09/30

『日本をダメにしたB層の研究』

 ツイッターなどでときおりB層という言葉を見かけていたが、本書でその意味が分かった。これはげんなりする4象限で、縦軸がIQの高低、横軸が近代的価値への肯定、否定で分けられている。B層というのは、低IQ、近代的価値肯定の象限に当たる。ここで「近代的価値」と呼ばれているのは、「グローバリズム、普遍主義、改革・革新・革命」に当たるとされている。

 ところで、このフレームワークは、著者適菜収が設定したものではなく、これまたげんなりするのだが、2005年の郵政選挙で、自民党が広告会社に作成させた概念だという。「構造改革に肯定的でかつIQが低い層」「具体的なことはよくわからないが小泉純一郎のキャラクターを支持する層」としてターゲティングされている。

 この本は、タイトルが示しているように、そのB層をこてんぱんに批判している。批判は小気味よく、たとえば、どこでもいいのだけれど、

 そもそも、宝くじを買うこと自体、どぶにカネを捨てるようなものです。
 胴元が五割もっていくギャンブルなんてそうはありません。「夢を買う」のが宝くじなら、「夢に流される」のがB層です。

 と、こういう具合いに展開されていく。

 その矛先は政治家にも向けられていて、小泉も鳩山も小沢も安倍も橋下も、批判の俎上に挙げられている。このところ、この面々のどちらかには加担する文章ばかりに出会うので、痛快ですらあった。

 ところで著者は、B層に呆れているのは確かだが、別の層から眺め降ろしているというより、いくぶんかは誰しもB層であることを踏まえて、自己理解に基づく自己批判として見えるところが、嫌な後味を残さない文章になっているのだと思う。ぼくはむしろ、毒をもって毒を制するなら、もっと毒があってもいいと思ったくらいだった。

 そのことに関わるのか、よくわからないけれど、結論的な主張として、著者はこう書いている。

 ゲーテは民主主義を病気の一種と考えていました。
 しかし、近代二〇〇年において、この疾病は急拡大し、B層社会を生み出しています。
 重要なことは、まず民主主義を廃棄すること。
 そして、自由な言論の場である議会を民主化を推進する勢力から守りぬくことです。
 それが文明社会の住人の責任です。

 けれどことはもっと面倒で、「自由な言論の場である議会」も、B層は浸透しているのだから、B層浸潤を前提として考えていかなければならないのだと思う。それには、もっと毒が必要なのではないだろうか。

 

『日本をダメにしたB層の研究』


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