« 『経済学・哲学草稿』の自然哲学 | トップページ | 『骨が語る日本人の歴史』 »

2015/09/01

『しまくとぅばの課外授業』

 石崎博志の『しまくとぅばの課外授業』(2015年)は、コラム集の装いをしているけれど、なかなかハードですらすらと軽く読み進められる本ではない。

 ぼくも地名に興味があるので、そこを取っかかりにすることにして、「保栄茂(ビン)」のコラムを見る。

 『海東諸国紀』(1501年)の発音体系に照らすと、「保栄茂」は、ポエモ[poemo]だったと考えられる。

 『おもろさうし』では、「ほゑむ」と表記されているが、

 ・当時は半濁音表記が存在しない。
 ・『おもろさうし』では、しばしば濁音が省略される。

 『おもろさうし』の発音を17世紀と仮定すれば、この時代には、ポエム[poemu]、ボエム[boemu]になる。

 ここで、p音→h音という変化、濁音はそのままということを踏まえれば、「おもろ」時代は、ボエム[boemu]だということになる。

 16世紀か17世紀にかけて、ポエモ[poemo]→ボエム[boemu]、あるいは、ボエモ[boemo]→ボエム[boemu]になった。

 ここから「ビン」までまだ距離があるけれど、その過程では、狭母音化が起こる。要するに三母音化だ。石崎は、「首里・那覇」の母音が三母音になるのは、1800年代前後と見ている。

 先史からの時代の長さを考えると、1800年前後というのは、ずいぶん最近のことだし、しかも急激な変化に見える。ここからは素人の推論に過ぎないけれど、この三母音化は、歴史的には、三母音に戻ったことを意味しないだろうか。グスク時代以降の大和からの移住と大量の大和言葉の流入により、琉球語は五母音化されるが、それが再び1800年前後に、三母音へと回帰したと捉えてみるのだ。

 この本から刺激を受けて得た着想としてメモしておく。

|

« 『経済学・哲学草稿』の自然哲学 | トップページ | 『骨が語る日本人の歴史』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/87956/62152564

この記事へのトラックバック一覧です: 『しまくとぅばの課外授業』:

« 『経済学・哲学草稿』の自然哲学 | トップページ | 『骨が語る日本人の歴史』 »