呪術師・シャーマン・巫覡
粗雑さは免れがたいけど、シャーマンについて整理しておきたい。霊力と霊魂の技術者としてシャーマンと総称するが、それぞれについては呼称を変える。
呪術師:霊力の技術者(オーストラリア、アボリジニ)
シャーマン:霊魂の技術者(北方アジア)
巫覡:霊力、霊魂混融の技術者(東南アジア)
動物の模倣は、狩猟儀礼の骨格をないしている。ただし、アボリジニの場合は、呪術師が行うというより、種族の人々で行う。シャーマンの場合は、トランス状態に入る際に、動物の鳴き声の模倣が伴う。
天空飛翔のテーマは、シャーマンの中核をなす行為。
「楽園」は、共同幻想と対幻想、自己幻想が分離していない状態を指す。ドリームタイムと言ってもいい。アボリジニにとっては、呪術師の独占物ではなく、イニシエーションによって見ることができるようにする。シャーマンは、喪失後の位置にいるから、一時的な回復を試みる。巫覡にとっては、一時的な回復も試みられない。
そこで、呪術師やシャーマンは、共同幻想の統御が、特にシャーマンにとって大きな課題になる。巫覡にとっては、共同幻想は統御の対象ではなく、同調の対象だ。
シャーマンにも憑依は伴うが、それが中心になるのは巫覡。その違いは精霊に対する態度に現れる。シャーマンにとっては対話の相手だが、巫覡にとっては憑霊の対象。
病気の治療に三者の違いは鮮明に現われる。呪術師は、病人から呪術によって埋め込まれたモノの除去を行う。シャーマンは行方不明になった病人の霊魂の捕獲を目指す。巫覡は、病人に憑いた悪霊を除去する。
アボリジニでは、呪術師だけでなくイニシエーションで、水晶の埋め込みという過程が伴う。シャーマンはその入巫の際に、肉体の改造が行われる。
三者に共通するのは、トランス状態に入ることだが、アボリジニにおいては、呪術師の独占物ではなく、種族員に共通してみられる。トランスを誘発するものは、シャーマンにおいて太鼓、巫覡はしばしば身体の律動を伴う。
三者は、その社会の共同幻想の位相が異なる。自己幻想や対幻想との分化の度合いが、呪術師、シャーマン、巫覡の順に大きくなる。
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