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2015/07/09

『新崎盛暉が説く構造的沖縄差別』

 新崎盛暉のこの本は、2012年、民主党政権下で出されている。そのことを踏まえて、備忘。

 「防衛相も外務省も沖縄の米軍基地に対する存在の当然視」という鳩山元首相の発言を受けて、

 この数十年にわかる思考停止状態の中での「沖縄の米軍基地に対する当然視」こそ、構造的差別にほかならない。

 ここには、米軍基地の不可視化も入れたい。

長らく日本戦後史の研究・記述の中からは、「沖縄の分離軍事支配」が欠落していた。
日米関係を安定させ、相互協力関係を深めるための六〇年安保改定は、占領政策として生み出された構造的沖縄差別の日本政府による積極的な利用の始まりであった。
朝鮮半島をにらんで岐阜県や山梨県に後方展開していた米海兵隊は、五三年の朝鮮戦争休戦によって、米軍事戦略上からも、一歩後退することが可能になっていたのであろう。

 そうであれば、普天間基地の移設先として、岐阜県や山梨県に返すという筋道もありうることになる。

一九六〇年、日本(ヤマト)の米軍基地は、五二年段階の四分の一に減少していた。沖縄の米軍基地は、二倍に増えていた。基地のしわ寄せである。こうして六〇年代には、日本と沖縄に、ほとんど同一規模の米軍基地が存在することになった。
彼(佐藤首相ー引用者)らにとって沖縄返還は、あくまで「戦争によって失われた領土の回復」であって、「異民族軍政下からの同胞の解放」ではなかった。
沖縄返還を間に挟む数年間で本土の米軍基地は、約三分の一に減少した。一方、沖縄の基地はほとんど減らなかった。その結果、日本の国土面積の〇・六%の沖縄に在日米軍基地の約七五%が集中するという状況が生じた。
(前略)全国的には、安保は米軍基地と共存することである、ということが実感できなくなっていった。基地問題は沖縄問題となった。
多くの政党や労組、市民団体などがヤマトの組織に系列化されたことも地域共闘の結束力を弱めた。
(大田知事の代理署名拒否は-引用者)、近代国家日本が成立して以来初めての政府(日本国家)対オール沖縄の対決でもあった。
辺野古は、米側にとっては、取引材料(グアム基地整備のための日本の財政支援獲得など)としての既得権の確保に過ぎず、日本側にとっては、米軍基地の沖縄への封じ込め策(基地問題・安保問題の全国化の防止策)であった。
SACOの共同議長として、辺野古移設に深くかかわtったジョセフ・ナイ・ハーバード大名誉教授までもが、「海兵隊を沖縄内に移すことは、沖縄の人びとから受け入れられそうにない。海兵隊をオーストラリアに移動させることは賢明な策だ」と主張(後略)。
 二〇一〇年九月、尖閣諸島海域で、中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突事故が起こった。当時、海上保安庁を所管する前原誠司国交省(沖縄担当相兼担)らは、この問題を利用して中国脅威論をあおり、在沖米軍基地、とりわけ普天間の海兵隊基地やそれに代わる辺野古の信基地建設の必要性を強調する根拠として、最大限利用しようとした。

 ここには、ジョセフ・ナイの「中国の弾道ミサイルの射程内にある沖縄に米軍基地が集中することが対中国の軍事戦略上、リスクになる」という見方を置いてもいい。中国の脅威を認めたら、逆に沖縄の米軍基地はリスクであるという専門家の見解もあるということだ。

 安保をどう考えるか。

 「維持すべき」 7.3%
 「平和友好条約に改めるべき」 54.7%
 「破棄すべき」 13.6%
 「多国間安保に改めるべき」 9.7%
 「わからない」 14.7%
 (2010年、沖縄県)

 日米安保体制を今後、どうしていくべきだと考えるか

 「現在の体制を維持していくべきだ」 43.5%
 「解消していくべきだ」 4.02%
 (1995年、日本経済新聞)

 以下は、Webから(「世論調査報告書」

 ・日米安全保障条約についての考え方
 日本は現在,アメリカと安全保障条約を結んでいるが,この日米安全保障条約は日本の平和と安全に役立っていると思うか

 「役立っている」 81.2%(「役立っている」36.8%+「どちらかといえば役立っている」44.4%)
 「役立っていない」 10.8%(「どちらかといえば役立っていない」8.6%+「役立っていない」2.3%)

 ・日本の安全を守るための方法
 日本の安全を守るためにはどのような方法をとるべきだと思うか

 「現状どおり日米の安全保障体制と自衛隊で日本の安全を守る」 82.3%
 「日米安全保障条約をやめて,自衛隊だけで日本の安全を守る」 7.8%
 「日米安全保障条約をやめて,自衛隊も縮小または廃止する」 2.2% 

 ・日本が戦争に巻き込まれる危険性
 現在の世界の情勢から考えて日本が戦争を仕掛けられたり戦争に巻込まれたりする危険があると思うか
 「危険がある」 72.3%(「危険がある」27.3%+「どちらかといえば危険がある」45.1%)
 「危険はない」 22.0%(「どちらかといえば危険がない」17.2%+「危険はない」4.9%)
 (2012年、内閣府大臣官房政府広報室)

 本に戻る。

 中国とアメリカのどちらの関係がより重要か(日本)。
 ・アメリカ 68%
 ・中国 15%

 日本と中国のどちらの関係がより重要か(アメリカ)。
 ・中国 50%
 ・日本 33%

 日本に米軍が駐留している目的
 ・日本を防衛するため 42%(日本)、9%(アメリカ)
 ・アメリカの世界戦略のため 36%(日本)、59%(アメリカ)

 日本が軍事大国になるのを防ぐため 14%(日本)、24%(アメリカ)
 (2010年、朝日新聞)

 新崎はこの結果を受けて、

日本の世論やその背後にあるメディアが、如何に「片思い」であるかを示している。

 と書いている。

 

『新崎盛暉が説く構造的沖縄差別』

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