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2015/07/07

『日米同盟vs.中国・北朝鮮』

 民主党が政権にいた時に出版されたものだが、まず、かなり率直に、あけすけに語っていることに驚かされた。

 春原 日米同盟の進化・発展に向けて、日本がクリアすべき課題とは何でしょう。
 アーミテージ それは日本人が自ら決めることですね。それが第一に言えることです。次に憲法九条と集団的自衛権の問題は、この同盟関係にとって阻害要因となっています。それが二番目。三番目に言いたいのは、何も日本は憲法を改正する必要はないということです。ただ、内閣法制局による(憲法九条の)解釈を変えればいいのです。第四のポイントは繰り返しになりますが、ソマリア沖での自衛隊による活動(海賊対策)は集団的自衛権の行使と何ら変わりはないということです。
 中国が宮古海峡や尖閣諸島の周辺に海軍の艦隊を派遣して日本をいら立たせているのに、なぜ、日本はリスク・フリーの切符を中国に易々と与えているのでしょうか?

 別の場面でのアーミテージの発言。

 安倍さんは自立志向が強いでしょう。しかし、同時に敏感な人物であり、日本が望むものが自立しても得られないことをわかっていた。日本にとって次善の策は日米同盟の枠内でより強くなることです。

 これを合わせると、今、国会で進行していることをそのまま説明していると言ってもいいようなものだ。アーミテージはなぜ、こういう要求をするのか。利権が絡んでいるかどうかは、ぼくが知りようのないことだが、この要求も米国の国益に適うということは、儲かるということ以上に国力の低下があるのではないだろうか。

 また、春原は、議論の節目で「日本がすべきことは?」という質問をすると、「それは日本人が決めること」という応答が、このインタビューの文脈のパターンとして繰り返されている。この応答は、恫喝の意味も含まれているかもしれないが、滲み出る卑屈さへの苛立ちのようにも見える。

 もうひとりの(ジョセフ)ナイは、辺野古移設について、「沖縄の人々の支持が得られないなら、われわれ、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」(記事:「ナイ元国防次官補、辺野古「再検討を」 地元民意を重視」)と、今年4月に発言している。より理解を示そうとする発言は、このインタビュー集でも発見できるが、レトリックと思えるものもあった。アーミテージがジャイアンなら、ナイは出木杉くんとでも言うような。

 湾岸戦争の際、国際評価を受けなかった日本は、資金だけ提供したからだと受け止めているが、ナイは、

 しかし、湾岸戦争で日本は大きな資金的負担を背負ってくれました。ただ、そのことについて日本は渋々といった態度を見せ、しかも対応の速度は遅れ気味でした。だから、それに見合うほどの信任を得ることもなかったのです。

 と、対応の仕方だったと言及している。

 また、鳩山元首相の「対等な日米関係」の発言に対するナイの応答。

 真に対等な関係を築くためには、日本は核兵器を独自に開発し、独自の外交を実現するという決断をくださなければなりません。しかしながら、私は日本が独自の核を開発し、防衛政策において完全な自主・自立を求めているとは思いません。
 もちろん、そういった意味において、このパートナーシップにはある種の不平等があるというのは事実です。なぜなら、米国は核を保有する超大国であり、日本はそうならないことを決めたからです。
 一方、この関係は別の意味ではもちろん、平等なパートナーシップでもあります。たとえば、法的(国際法上)には、双方は完全に平等な立場にあります。仮に日本が明日にでも在日米軍兵力の国外退去を求めるのであれば、日本はそうできるのです。でも、実際には軍事的な不均衡、非対称性があり、不平等でもあります。それは単純に表現の問題と言えるでしょう。

 沖縄出身の経済人が、「日本は歴とした独立国であり、日米は同盟国である。にもかかわらず、現在は独立国、同盟国として扱われていない」と言ったところ、キッシャンジャーは、「何を言ってるんです。あなた方は一度負けたんですよ。お忘れですか?」と答えたという(『“悪の論理”で世界は動く!』)。

 このふたつの応答を並べてみると、ナイの表現はソフトに見えるし、議論は進めやすい。しかし、キッシンジャーの方が率直でことの本質を告げたもので、ナイはそれをクールに言い換えたものだとも見える。

 「核の抑止力」については、こう。

 これらの基地、米軍兵力はいずれも日本にとって、米国の核の抑止力を最も強く担保してくれるものなのです。(中略)沖縄に駐留する米軍は基本的に「人質」の役割も兼ねているのです。

 この手の話題の素人でもあるからだけれど、ぼくはこの発言はとても理解しにくかった。そう感じるのは、同じ言い方をすれば、米軍基地の兵士は実際に武装しているのだから、沖縄島の島人を人質に取られているとも言えることが頭をもたげてくるからだろう。ナイはとてもスマートな物言いをするけれど、キッシンジャーの言う本質を見えにくくさせてもいるのではないだろうか。

 ただ、沖縄の返還については、アーミテージと意見を異にしてこう言っている。

 個人的には我々はもっと早く沖縄を日本に返還すべきだった、と思っています。もちろん、沖縄には(軍事的な観点から)戦略的な重要性もあるのですが、たとえばあと十年ぐらい早く返還していれば良かったと思います。

 なぜなのか、春原がここで突っ込んでいないのが残念なのだが、これは返還が遅れた分、沖縄人の日本と米国への不信の強化につながったことが、ナイに考えられているからだろうか。そうだとしたら、「沖縄の人々の支持が得られないなら、われわれ、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」という発言とは辻褄が合う。

 

『日米同盟vs.中国・北朝鮮』

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