『ポリネシア人―石器時代の遠洋航海者たち』
なんといっても片山が挙げているオセアニアの半球にうっとりする。オセアニアを中心におけば、日本列島は世界の縁だ。そして、ヤポネシアとして見えてくる。島尾敏雄はこの角度から地球儀を眺めたことはあったろうか。
だからオセアニアの先史学を扱うには、東のアメリカ大陸よりもむしろ西方の、東南アジアや東アジアの島嶼部、さらには東南アジアの大陸部を視野に入れておかなければならない。インドネシアの島じま、フィリピン、台湾、さらには日本列島弧(ヤポネシア)までもが近隣地域ということになる。また、東南アジアの大陸部では、マレー半島、インドネシア半島、さらには中国の揚子江以南あたりを念頭に置いておこう。
また、近いオセアニアと遠いオセアニアの図解もありがたい。
人類の歴史は、ハックスリー・ウオーレス線の内側では百万年以上も前まで、そしてリモート・オセアニア線の内側では一万年以上前に遡る。しかるに、リモート・オセアニアの人類の歴史は、せいぜいのところ何千年か前のラピタ人の頃、そして安山岩線を越えたポリネシアでは、ポリネシア人の対航海時代のころまで待たなければならないのである。
ただし、オーストラリア・アボリジニは5万年以上前とも言われているのだから、上記の説明には違和感が残る。また、日本列島と琉球弧が大陸棚でつながっているのも気になる。ただ、「ラピタ人が縄文人につながる可能性だって否定できないのである」という指摘は面白いと思う。
私自身は最近、広く南シナ海一帯をラピタ人のホームランドとして視野に入れたほうがよいのではないか、なにも台湾とかフィリピンとかスラウェシなどに限定する必要はないのではないか、という考えを披歴した。そして、日本列島の縄文人も含めて、ラピタ人のオリジンを探していくべきであることを指摘した。
松村博文は、「縄文人骨の情報」(『人と社会―人骨情報と社会組織 (縄文時代の考古学)』)のなかで、縄文人の起源について考察している。
アジア人の進化は北方アジア系とスンダランドの集団の二系統に由来すると考えられる。日本列島の縄文人は、
先住スンダランド系集団をベースに、多少の北方アジア系の集団との混血によって成り立ったのではないであろうか。このような先住集団と北方から南下してきた人びととの混血は、大陸辺縁部における平行現象としてとらえることが可能である。
この説明では、日本列島もスンダランド系の先住集団がいたという理解になるが、合っているだろうか。
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