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2015/06/13

『太平洋―東南アジアとオセアニアの人類史』

 ピーター・ベルウッドの大著、『太平洋―東南アジアとオセアニアの人類史』は、棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』を補う参照用辞典のように使えそうだ。

 たとえばマンガイア島の他界への道行きで、この世とあの世をつなぐ穴が塞がれる契機になったのは、死者が「生者を病気や死で苦しめて、とても面倒を起こすようになった。彼らは、食糧を盗んだり、妻を奪ったりもした」からだった。ぼくはそれを、現世の地上の利害の矛盾を他界の共同幻想に押しやったものと見なしたが、この本で得られる解説は、裏づけてくれるものだった。

不毛な土地が多いマンガイア島に関して述べるなら、食料の多くが塩田からとれるタロイモであったので、当然住居もこの湿田付近に寄り集まることになった。食料源が特定の場所に集中していることから、マンガイア島ではよく争いがみられることとなった(p.467)。

 ニューヘブリデスのエファテ島には、ロイ・マタという酋長はレトカ島に埋葬されたが、多くの家臣が自発的に殉死したという伝承が残っている。そして実際、レトカ島で、計35体の埋葬骨が発掘された。うち、11対は男女のペアだった。その写真が載っているのだが、まさに添い寝というのが相応しく、女性が男性に寄り添っている。けれど、ロマンティックに見なすわけにはいかない。

集団埋葬された中で男たちは、埋葬前にカヴァ飲料水で麻痺させられていたかのように無防備で、しかし女たちの多くは生きて意識をもったまま埋められたことを推察させる姿勢であらわれた(p.358)。

 棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態』では、エファテ島の葬法は、坐位埋葬だが、死体を墓穴に納めると、一頭の豚を連れてきて頭を切り、胴体もろとも副葬をする。やはり、霊魂思考が強く、豚を他界へ伴だたせている。これが人間の代わりであるということだ。

 また、老人が「その要求により」生きたまま埋葬されることがある。深い穴に老人を坐位にして沈め、豚を連れてきて老人の腕と豚を綱でつなぐ。そして綱を切り、葬宴で豚を食べる。そして老人に蓆を被せ土をかける(p.230)。

 この習俗をみれば、殉死が行われるのに無理がないのが分かる。また、殉死者は伸展位を採っており、これは坐位と異なることも、麻痺させた上での殉死であることを裏づけるのかもしれない。ただ、『太平洋』では、「食人風習の結果と思われる散乱する人骨やブタ骨もあらわれ」と出てくるのだが、直接的な霊力思考も強いことを示すものなのか、分からない。

 琉球弧や日本については、見るべき記述がなかった。


『太平洋―東南アジアとオセアニアの人類史』


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