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2015/05/20

殉死・食人・添い寝

 後藤明は、『南島の神話』のなかで、フィジーやニューヘブリデス諸島での殉死について触れている。

 ニューヘブリデス諸島では、添い寝をした男女の骨が十一対も一緒に発掘された。これは本当に殉死の風習があったことを示すものである(p.112)。

 棚瀬襄爾の『他界観念の原始形態』では、埋葬に際しての財物の滅却の記述はあったが、殉死については書かれていなかったように思う。

 ニューブリテン島やダントルカストーでは、死者との添い寝が行われ、ニューブリテン島では、「霊魂が、あの世へ供をするためである(p.206)」と説明されていた(cf.「葬法におけるメラネシア、ニューギニアとの類似点」)。ぼくたちは、これを霊魂思考優位のもとにおける添い寝の様式とみなし、琉球弧の場合は、霊力の転移の行為とみなして区別した。ぼくたちは、あの世へ供をする添い寝は、「殉死」の弱められた変形であるのかもしれない。

 「添い寝」の意味

 霊魂思考優位 殉死→添い寝(あの世への供)
 霊力思考優位 食人→添い寝(霊力の転移)

 一方、中山太郎はアイヌのウフイという儀礼について書いている。

大昔のアイヌは死人があると、刃物を以て死者の肛門を抉り、そこから臓腑を抜き出し、戸外に床を設けてその上に置き、毎日婦人をして水を濺そそぎ遺骸を洗わせ、こうすること約一年を経て四肢身体が少しも腐敗せぬときは、大いに婦人を賞し衣服煙草の類を与えるが、もしこれに反して腐敗することがあると、たちまち婦人を殺して先に葬り、その後に死人を埋めるが、これをウフイと称えている。

 ここには、台上葬の痕跡と殉死とを同時に見ることができる。やはり、アイヌは高い強度の霊魂思考のなかに、霊力思考を内包していると思える。(cf.「「アイヌの霊魂観」(山崎幸治)」「北海道アイヌの葬制 : 沙流アイヌを中心として」)。

 また、中山は琉球における食人も断言して書いている。

 屍体の一部を遺族の者が食う民俗は、昔から今に至るまで、多少その形式は異っているが、各地に行われているようである。琉球では大昔は死人の肉を遺族または親族が食ったものであるが、現今では人肉に代えるに豚肉を以てするようになった。

 
『南島の神話』

『タブーに挑む民俗学―中山太郎土俗学エッセイ集成』

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