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2015/04/22

ビッチルとイビ

 御嶽のイビはほとんど琉球石灰岩であるが、ビッチルは必ずしもそうではなく、砂岩、古世紀石灰岩、珪岩、安山岩んど琉球石灰岩は一部を占めるに過ぎない。

 御嶽のイビが琉球石灰岩であることは、御嶽信仰が海との関係があるからだという説もあったように記憶しているが、それはむしろ琉球石灰岩は、八重山では一般に昔から『ヤマイシ』とよばれているので、山とのつながりからではないかと考えられる。(牧野清「八重山のビッチル(自然石)信仰」『八重山文化論集』

 これは重要な視点だと思う。海近くに設けられた初期集落では、霊石は琉球石灰岩に拘泥してなかった。御嶽は、「山」との連結のもと、琉球石灰岩(ヤマイシ)が選択された。両者を通底しているのは、「生長する石」に通じる霊石信仰である。もちろん、自然石に霊力を感じたのだ。

 石垣島には、ビッチルにまつわる伝承が残っている。クバ笠が売れないので、雨ざらし陽ざらしのビッチルを可哀想に思って、ビッチルに結えつけて帰ったら、その後、幸せな人生を送ったというものだ。民潭自体は新しいが、ここに流れている信仰の形は、石に対する霊力をもとにしたもので、とても古いと思える。

 カキの近くの拝所には霊石があり、魚を埋めるという行為も、霊石の霊力をもとに魚の増殖を祈願したものだと思える(cf.「定着を促した漁法」)。

 これらの霊石は、霊魂思考の強まりとともに、神が彫られていくことになる。

 メモ。カンガルーをトーテムとするアルンタ族では、神話時代のカンガルー動物をあらわす岩に自分たちの血を流す。カンガルー・人の血は、そこに存在している動物・カンガルーの精霊を放逐し、散布する。これがカンガルーの数を増加させる(『宗教生活の原初形態〈下〉』)。また、アルンタ族では、そこを通る女を孕ませるために死霊が集まる岩がある。

『宗教生活の原初形態〈下〉』

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