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2015/03/10

「頭蓋骨」の二重性

 頭蓋骨の意味を持つコルワルは、それを象徴として、死者・祖霊像をコルワル像と呼んだ。小林は書いている。

ヌムファー島の説話では、最初のココナツヤシが女性の頭蓋骨から芽生えたことを語っている(死体化粧説話)。頭蓋骨とココナツは同じ呼び名リウリ(rewuri)である。頭蓋骨はココナツの油で磨かれた。ワンダメン湾地方やルーン(Roon)島では座して姿勢で埋葬されたり、カヌー型の棺に入れて晒された。いずれも遺体から頭蓋骨と脊椎骨と胸骨を持ち帰り、洗骨して喪の期間中遺族が首まわりに着用していた。その後は呪術具(占いなどの用具)として用いられたという。(中略)。

 剥落すべきものを剥落させ、最後に残るのが骨である。この清浄な白骨は腐らないし、変化しない。半永久的に残すこともできる。遺体時に頭部が白骨化する時は、死者が生者の住むこの世(現世)を離れ、あの世つまり祖霊の国:他界に去る時でもあった。多くの民族において頭は他の身体に比較して特別に扱われていた。頭蓋骨が崇拝され祭祀の対象とされたのは、頭が精神の座位としてではなく、生命生殖霊が勧請され宿る所として、豊饒や復活の呪力を具えていたとみなされていたからである。例えば、埋葬に際して復活(再生)祈願の頭蓋骨崇拝が行われ、作物の豊饒や狩猟の成功を願って首狩りが行なわれた。

 葬法には台上葬も採られ、頭蓋骨以外の骨も使われ、呪術具になるなどの点で、北西ニューギニアでは霊力思考がまだ強かったことが示されている。その霊力からいえば、頭蓋骨は霊力の座だった。しかし、ここでも霊魂思考は進展している。そもそも霊力が宿るのは腐る身体そのものである。そのことをよく示しているのは、再生が手続きではなく、祈願になっていることだ。この段階では、頭蓋骨は霊力と霊魂の二重性を背負っていると思える。

 再生の手続きに尊重されるのは橈骨などだったが、霊魂思考の進展とともに再生は祈願となり、重視されるのは頭蓋骨になる。この転換には、ココヤシという有用植物との同一視や霊魂の座としての見なしが関わっているようにみえる。


『環太平洋民族誌にみる肖像頭蓋骨』


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