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2015/01/11

脱魂による治療の北方大陸例

 脱魂によるシャーマニズムが行われた北方・中央アジアの種族から、脱魂による病気の治療の例を挙げてみる。


1.脱魂による捕霊

トレミュガン族。脱魂して病人の魂を冥界に探す。脱魂から正常な状態に戻る時、握りしめている右手に病人の魂が入っている。

エニセイ・オスチャーク族。ざっと魂を探す。脱魂し魂を探す。歌ったり踊ったりしながら高く昇っていること、出会う精霊について語る。続いてトランスに入るために踊り、脱魂し死者の国に入り、遂に病人の魂を持って帰ってくる。

 この例では、「脱魂」が身体を抜け出した霊魂の探索と捕獲に適った行動様式だということが分かる。


ブリヤート族。魂呼びの呪文を唱える。これでうまくいかないと、村の近く、森、草原、海底と魂を探す。これでも見つからなければ、エルリクに捉えられていることを意味するので、捉えられた魂を取り返すために高価な犠牲を払う。犠牲の人が眠っている間に鷲の形をして魂を抜きとり、エルリクに捧げる。

 ここに「脱魂」の記述はないが、それと思しきものだ。


オスチャーク族(イルティシュ)。天界の至上神に着物を献上する。一日の断食、日没後の風呂の後、茸を食べ寝る。何時間か後、突然起き、全身を震わせて、精霊が死者を通じて語ったところを聞かせる。犠牲をささげるべき霊など。翌日、特別の犠牲が捧げられる。茸中毒による脱魂。

アバカン・タタール人。魂呼びの行事が、治療法探しの脱魂の旅に取って代わっている。

 意図的に中毒症状を起こしてトランス状態に入るのは、現地の大陸人には堕落だと思われている。タタール人では、目的と行動はちぐはぐになっている。これは、脱魂が自在ではなくなった段階のものだ。


バクサ(カザフ・キルギスタン)族。治療が魔よけの儀式に変化(悪霊を脅し、焼けた鉄の上を歩き、火のついた灯心を何回も口に入れ、舌で焼けた鉄を舐め、ナイフで顔を切るが傷は全くつかない。離れ業を演じた後、至上神を呼び出す。

 この例は、霊魂思考に霊力思考が混融していることを示している。そして、悪霊払いでは必ずしも脱魂を必要としていない。そこで、脱魂は別の場面で用意されている。


2.脱魂による捕霊と病因の除去

パヴィオツォ族(北米)。脱魂し補助霊を呼び出す歌を歌う。病人に意識がなければ霊を取り戻すために再び脱魂する。脱魂を終えると、旅の様子を長々と聞かせる。飄風(ひょうふう:つむじかぜ)の幻覚を見れば、原因がつむじ風であることを意味し、病人が美しい花のなかを歩いていれば、必ず癒えることを意味し、花が色褪せていれば病院はまもなく死ぬと予想される。病因が体内に侵入した異物だと分かると、トランスのなかで病気のいすわっていると思われる体の部分を吸って病因を除去しにかかる

 脱魂による病因の探索と吸い出しによる病因の除去。霊魂思考と霊力思考が見事に分かれている。


3.悪霊の除去と脱魂

ヤクート族。守護霊が呼ばれ、病気の原因を探す。次に悪霊と戦う。最後に犠牲にした動物の魂を天界に連れてゆくために脱魂する。

 悪霊払いは、「戦い」が重要だったことが分かる。そしてそこでは必ずしも脱魂は主眼にならない。しかし脱魂の技術はある。供犠の動物の魂を霊魂を天界に届けるために脱魂が行われるのは、脱魂の必然性の衰退を物語るのだと思える。

『シャーマニズム 上』


『シャーマニズム 下』

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