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2015/01/09

天の階層化と地下の対置

 天界を信仰する場合、単純埋葬によるものが原型だが、それ以外の類型がみつかる。それは、天が階層化しているときで、その場合は、葬法は伸展位の乾燥葬になるのだ。(棚瀬襄爾『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』)。

 典型的なのは、ポリネシアだが、この場合、地下他界が対置されて、社会階級によって天と地下の行く先は区別されている。

 棚瀬は、北方の諸民族についても考察を加えている。

 チュクチ族。上天と中天(階層化の萌芽が見られる)。地下の対置。
 アイヌ族。6層の天と6層の地下。
 ヤクート族。17層の階層と世界を天、中、地下の三界に分けているとの報告あり。
 アルタイ人。善なる神は地上17階に住み、悪なる神は地下7~9階に住む。
 モンゴル・ブリアト。99の天の観念。地下の報告はなし。

 これらの地域での葬法は、地上放置または台上葬が多く、埋葬が少ない。この、埋葬が少ない点を除けば、ポリネシアと同類型のものだと見なすことができる。

 琉球弧において高神が発生したとき、そこで天界が表象されても不思議ではない。このとき、天界を表象した根神、祝女たちはどの葬法を採っただろうか。ぼくも知る範囲では、埋葬も乾燥葬もどちらもある。乾燥葬、つまり台上葬を採った場合は、島人の、いわゆる風葬と見分けがつかない。しかし根神や祝女の場合は、天界の神へ赴くという観念を宿したかもしれない。そして、ここでの天界には階層は存在していない。だから、少なくとも初期は、内在的なもので、北方やポリネシアからの流入ではなかったのかもしれない。

 ただ、注意しなければいけないのは、天界というのはもともと厳密な意味での他界ではない。現世の延長上の超越としてそれは表象されている。棚瀬は、一種族が持つのはひとつの他界だから、天と地の対置は征服を含む種族の混交であり、これを特異な例として挙げているが、生と死が分離して種族全体が他界を観念するようになって天界も他界の表象を帯びるようになるのではないか。ポリネシアや北方の場合は、地下他界との対置によって、天界は他界化したのではないだろうか。そこで、天は階層化したと考えるのだ。

 cf.「宮古島における天上と地下の対置」


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