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2014/12/30

ニューギニアの他界と葬法

 次はニューギニア(棚瀬襄爾『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』)。

 マリンド・アニム族は、埋葬だが頭蓋崇拝はないと言われ、複葬によって骨を赤く塗る。他界は地上の他界だ。ということは、相当に霊力思考が優位になっていると思える。

 祭儀の際の殺害は霊魂思考、食人や強姦は霊力思考によるものと見なすことができる。強姦し殺害した少女が、食物へと化身するのは霊魂思考と霊力思考の混融だ(cf.「ハイヌウェレ神話とマヨ祭儀」)。マリンド・アリム族にはトーテミズムの報告もあり(p.368)、植物への転生信仰が少なくとも潜在的にはあっておかしくない。また、少女の殺害と神化は、ある意味で、首狩りの代替を意味するのではないだろうか。

 ニューギニアにおいては、埋葬するところでは、死者の財物、家屋、供物の破却が行われ、台上葬をするところでは、財物が禁忌とされ副葬される。棚瀬は、埋葬について、「死者のために供物を破却して、その霊魂を解放することに、根本的な意義があったのではあるまいか」としている。ぼくの考えでは、霊魂思考の優位なところでは、死者の所有物は他界の供をしなければならないから、霊魂化して他界へ参入させるために破却する。霊魂思考に霊力思考が混入したところでは、死者の所有物にも霊力を感じるから、関係の再編のために死者に持たせるのである。棚瀬は、供物にまで霊魂を認めることをニューギニアの特徴として挙げているが、霊力思考を大きく残していることを示している。

 ビナ族の霊魂は、ニロ・イオプ(内なる果実)とオボロがある。ニロ・イオプはふだんは胃にあるが、睡眠中や病気の時、外に出ると考えられ、長期の不在は病気の原因になる。肉体が死ねばニロ・イオプは太陽の沈む西方にある他界へ行く。オボロは人間のなかに住む悪霊で、2~3ヶ月間、付近をさまよう。オボロは他界へ行かず、長く叢林に住む。オボロを現す仮面舞踏が老人によって行われる。

 棚瀬は、ニロ・イオプが「内なる果実」を意味することから、これを生命霊とみなす一方、霊魂観は首尾一貫しないとしているが、ニロ・イオプはいわゆる霊魂であり、オボロは霊力であると捉えれば首尾は一貫している。ニロ・イオプの名称には霊力思考の関与があり、オボロがしばらく付近を彷徨うところには、霊魂思考の関与があると理解することができる。ビナ族のこの例は、仮面がやはり霊力思考の関与のもとに生まれることを示しているのではないでだろうか。

 トレス海峡西部諸島で、新しい死霊は怖れるが、古い死霊には、親しみの感を持つというのは、肉の霊魂と骨の霊魂の差異とみなせる。再生信仰は霊力思考の現れだから、霊魂思考が混融しても、再生信仰を持つところでは、霊魂観にも霊力的側面がみえる。トロブリアンド諸島で霊魂バロマが「気息」の意味を持つのもそれだ。転生信仰にも霊力思考が混融している。霊力思考優位のところでは、霊魂は「出入転移の自在な原理的な力(p.362)」として捉えられるが、カイ族でそれは、「温度のように、それに触れるものに伝わるとし、また分泌物にまで霊魂あり」と表出されている。食人も霊力思考の産物だが、モレリ、キコリ地方では、「自己の身体の弱点を補わんがために、犠牲の身体の特別の部分を選ぶ」とされていて、志向性が明確化されている。


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