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2014/12/22

霊力思考とトーテミズム

 霊魂思考においては、人間の持つ霊魂の他に、精霊の存在を認めている。そして、霊魂の運動、死後の道行きや居来が語られる。一方、霊力思考においては、流動的な霊魂の変態が重視される。人間は動植物への変態をなす存在だ。だから、それはまだ霊魂と呼ぶのも相応しくないだろう。そこで、トーテミズムが生まれ、人間への再生信仰も生まれる。

 霊魂思考と霊力思考が合わさったところでは、人の他の動植物への転生信仰も生まれる。霊力思考のなかで、再生信仰はあっても転生信仰の例が見出せないのは不思議だが、霊力思考のすべての種族が再生信仰を生むわけではなく、すでに人間と他の存在との区別がなされたところで再生信仰は生まれたのだと思う。

 南部メラネシアでトーテミズムが明瞭に見られるのはファテ島で、植物をトーテムとしている。ファテ島は、埋葬を行うが、地下ないし海下、西方という報告に分かれていて、霊力思考も関与していると考えられる。

 バンクス諸島のタマテ結社はトーテム集団から発生している。彼らは埋葬を行い、地下の他界を持つが、「死霊は常に西方の日没の方向に行くとされ、西へ西へと村送りされ、ついに落日に面する海岸で海中に入り、あの世へ行くとされている(p.174)」から、霊力思考の関与が認められる。

 フィジィ諸島にもトーテミズムはある。フィジィも埋葬を行うが、他界は他の島の山中にあるとされるから、ここにも霊力思考の関与が考えられる。

 バンクス諸島やニューヘブリデス諸島では、鮫、蛇、かわせみ、梟、蟹、とかげ、鰻などは精霊の住む動物と見なされる。これらは霊魂思考からみれば精霊と見なされ、霊力思考からはトーテムともみなされる二重性を持つと思える。

 トロブリアンド諸島の他界は地下だが、ツマ島の地下という地上も観念されている。他界にいる神は初めて地上に人間を送った神でありトーテムを送った神であるように、トーテムを持つ。

 セピック河流域のノアパプアは浅い埋葬を行い、人間の霊魂がトーテムの霊魂に取られると死ぬとしている。死者の霊魂は、出自の地、トーテム・センターで生活すると考えられ、帰来するとも考えられている。死後、七週間して墓から下顎などを取り、「家の仮面置場にしまう(p.332)」とあるから、ここにも仮面習俗が存在している。

 霊力思考の産物であるトーテミズムは、霊魂思考との混融後も、生き生きとしているということはできそうだ。

 棚瀬は、「トテミズム文化で宗教的に太陽に対する関心が強まり、日神崇拝が行われる(p.370)」と書いている。琉球弧の若太陽信仰に通じるものだろうか、気になる(棚瀬襄爾(『他界観念の原始形態―オセアニアを中心として』)。


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