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2014/12/02

南太平洋の死体放置

 死体放置の原型を見ようとすれば、必然的に「死者を家に葬り、家を捨てる例」と同義になるが、もう少し琉球弧に近づけてみる。


 例1.シタラ・ワニヤ族(セイロン島)。

 死体は死の起こった洞穴や岩屋に残される。死体は洗ったり着物を着せられたり、飾ったりされないで、自然の仰臥の姿勢で寝かされ、木の葉や小枝で覆われる。時として大きな石が死者の胸上に置かれることがある。死後できるだけはやく死の場所を離れ、長期間寄りつかない。

 コビール・ワナマイ族(セイロン島)。墓穴は死体を墓に運んだ死者の二人の兄弟によって掘られ、枕も副葬されず、その中身も生者によってただちに消費された。墓には水も手向けられず、火も燃やされなかった。死体を運んだ二人も水で身体を洗ったり、その他の払浄も行わなかった。

 これらのヴェッダ族では、病気は死者や死霊と関係づけられない。死穢の観念は欠如している。他界の観念も持たない。

 例2.クブ族(スマトラ島)。

 家の中に死者や瀕死の病人を残して逃げ去り、遠く隔たった場所に新しいさしかけを作って住む(by ローブ)。以前には死者を埋葬せず、死者の死んだ小屋または死者の発見せられた場所に木の棒で二尺位の高さの垣をして、その上に木の葉で屋根を作り、それがすむと、その場を逃げ去った(by ハーゲン)。これをメランガンという(p.540)。

 未開のクブ族では、人間は死んでしまえばそれまでで、死後の世界の観念については何も持ち合わせていない(p.535)。


 洞窟を居住地とした段階では、洞窟に死者を葬り、生者はそこを去った。この場合、他界観念は持っていない。琉球弧においてこの段階の可能性は排除できない。


例3.タサウ族(マレー半島セランゴール州クアラランガット)。

誰かが死ぬと遠い森に運び、特に建てた小屋の中に寝かせ、七日間毎日そこに出かけて子供や最近親が見守るが、七日過ぎると、消えうせるものと考えてもう見守りに行かない。

 タサウ族では、死者のために家を捨てず、殯をし改葬(洗骨)を伴わない例だ。

 こうした例を追うのは、国頭の阿波に似たものがあるからだ。

 目撃者のいる最古の葬法は、海に近い村外れのアダンの繁みの中に納棺せずに遺骸を置いたままで、その後は何もしなかった。犬がその骨を加えてくることもあった(常見純一)。

Photo_2

 この表でいえば、常見の挙げた国頭の例は、2の類型に該当する。ぼくたちは、3を台上葬、4を埋葬とし、どちらにも骨の処理が伴う場合を考察してきた。しかし、琉球弧のアルカイックな葬法を理解しようとすれば、改葬の伴わない場合を組みこむ必要があると思える。

 すると、ぼくたちが風葬と呼んでいるものは、死体を放置して家を去る場合(1)、家を去らずに、外に死体を放置した場合(2)、外に死体を置き、骨化した後、骨を処理する(3)場合とを含むことになる。また、先に、琉球弧には埋められない埋葬があったとする仮説からすれば、外に死体を埋葬し、骨化した後、骨を処理する(5)の変形の場合もあることになる。

 風葬の分かりにくさ、重層性はこの4つの態度を含むからだと考えられる。

 そして少なくとも1~3の場合は、他界観念は明瞭に持っていない。もちろん、仮に国頭の阿波の事例でも、当事者は既に他界観念を持っているはずだが、葬法は頑固に残っていたとすれば、他界を持たない種族が琉球弧へ渡ってきた段階を想定する上では重要な事例なのだ。

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